開発者に聞く「くまグミ」ができるまで
OUMIさんがくまグミを作るきっかけとなったのは、北海道・白老町で木彫りの伝統工芸師がもう数人になり、皆が高齢化しているという話を耳にしたことでした。
そして3Dプリント商品の製作を本業とするOUMIさんに、木彫りの伝統工芸品を「3Dデータ化してアクセサリーなどにできないだろうか」との相談が。そこで同地の工芸作家・山田祐治さんに会いに行ったところ、山田さんは「木彫りの熊は一日に彫れる作業量が限られているから大量生産はできないし、店先にいると小学生の子どもたちが欲しそうにしているけれど、大きいし高額なので、なかなか喜ぶ顔を見ることができない」と語りました。
その話を聞いたOUMIさんは、当初はアクセサリーを作るつもりでしたが「山田さんの木彫りを小さな置物にして、たくさん作れるようにすればいいのでは」と“置物”作りから始めることに。鮭をくわえた熊の木彫りを3Dスキャンし、光造形方式の3Dプリンターでレジン成形したものを作って山田さんに見せると、それまでは寡黙で口数の少ない印象だった山田さんが「なんだこれは! すごいな!」と驚き、熱くたくさんのことを語ってくれるようになったそうです。
3Dプリントの置物からグミ作りへ
こうして、ものづくりのつながりをsinkop(アイヌ語で“つなぎ目”の意味) と名付け、ブランド化し2021年10月に販売スタート。リリースすると、光造形の見た目に対して「グミみたい!」という声が多く届き、それなら本当にグミも作れないかと、北海道はもちろん全国のグミ製造会社を調べたといいます。
しかし、これほどまでの細かい毛並みを大量生産で作るのは難しいと断られ、半ばあきらめかけていた2023年。これまでにも商品開発を手伝ってくれた人から、「新規事業で挑戦してくれる企業を見つけましたよ!」と連絡を受けました。
そこから、グミを製造する企業と、「毛並みをどう表現するか」「くわえた鮭がちぎれないための型作り」などと何度も試作を重ね、いよいよ2024年10月にくまグミを発売。店頭に出した途端あっという間に売れてしまったそうです。

