「無罪と言い切れなかったのか」有罪根拠のDNA型鑑定に疑義、強制性交致傷事件で東京高裁が差し戻し

「無罪と言い切れなかったのか」有罪根拠のDNA型鑑定に疑義、強制性交致傷事件で東京高裁が差し戻し

千葉県市川市で2018年7月、女性に性的暴行を加えてけがをさせたとして、強制性交致傷罪に問われた米国籍のクリストファー・ステイブン・ペイン被告人の控訴審判決で、東京高裁(家令和典裁判長)は12月11日、懲役8年の有罪とした1審・千葉地裁判決を破棄し、審理を差し戻した。

●弁護側は最高裁に上告する方針

弁護側は、有罪とした1審判決には事実誤認があり、有罪認定の根拠とされたDNA型鑑定には証拠能力がないと主張していた。

東京高裁の家令裁判長は、DNA型鑑定の証拠能力について、審理を尽くさないまま事実認定がされたと判断。鑑定が科学的に信頼できる方法によるものだったのか、改めて検討する必要があると指摘した。

判決によると、控訴審では新たに、採取された試料から、被告人とも被害者とも異なるDNA型が検出されたという。弁護側は無罪を主張しており、最高裁に上告する方針だ。

●弁護人「無罪と言い切る勇気が裁判所になかったのでは」

控訴審判決後の記者会見で、弁護人の佐藤博史弁護士は、DNA型鑑定の不自然な点を指摘したうえで、破棄差し戻しとした判断について「無罪だと言い切る勇気が、裁判所になかったのではないか」と述べた。

「差し戻し審に甘んじることなく、最高裁に判断を求めることになると思います」(佐藤弁護士)

また、クリス被告人と交際していた女性の父親で、被告人を支援している男性は「私の家を片付けて、クリスが来てもいいようにスペースを作っていた。無罪が出ることを信じていた」と話した。

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