先天性魚鱗癬の治療
現在のところ、先天性魚鱗癬に対する根本的な治療法は確立されていません。そのため、症状に対する対症療法が中心に行われます。
皮膚症状に対する治療
皮膚の乾燥を認める部分は、保湿剤や「尿素剤」「サリチル酸ワセリン」などの角質を溶かす薬剤を塗布します。
重症の場合は、角質が増殖するのを予防するために「エトレチナート」と呼ばれる内服薬を用いることがあります。エトレチナートには口唇炎や脱毛、成長障害などの副作用のリスクがあるため、慎重に適応を判断し、副作用の有無を観察しながら使用します。卵子や精子の形成にも影響を及ぼす可能性があるため、内服を中止した後は一定期間避妊する必要があります。
皮膚にかゆみがある場合は、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬、副腎皮質ステロイド薬を用いることもあります。
感染症に対する治療
細菌感染やウイルス感染、真菌(カビ)感染を認める場合は、原因となる病原体に有効な抗生薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬を用いて薬物療法を行います。抗生剤や抗ウイルス薬は、外用薬や内服薬のほか、点滴で投与することもあります。
全身状態の管理のための治療
症状に応じて体温の管理や水分の保持のための治療が行われます。十分に食事が摂れなかったり成長障害を認めたりする場合は、必要に応じて栄養剤を投与することもあります。
日常生活上の対策
先天性魚鱗癬の症状は生涯に渡り持続するため、日常生活上でもさまざまな対策が必要です。
発汗障害によって高体温になりやすいため、室温や衣服を調整して体温をコントロールする必要があります。症状によって十分に食事が摂れなかったり栄養が失われたりすることもあるため、栄養を十分に摂れるよう配慮することも重要です。また、患部からは細菌やウイルス等が侵入して感染症を起こすこともあるため、入浴などによって皮膚を清潔に保ち、十分に保湿するよう心がけましょう。
先天性魚鱗癬になりやすい人・予防の方法
先天性魚鱗癬は遺伝性の疾患であるため、発症を予防するための方法はありません。
出生後、皮膚の異常などを指摘された場合は、その後の対応について主治医の指示に従いましょう。
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参考文献
厚生労働省難治性疾患政策研究班難病情報センター「先天性魚鱗癬(指定難病160)」
吉田和恵「アトピー性皮膚炎の表皮バリアと表皮樹状細胞」
厚生労働省「160先天性魚鱗癬」
公益社団法人日本皮膚科学会「魚鱗癬」

