加齢とともに進む老眼の矯正方法として今、注目されているのが「多焦点眼内レンズ」です。遠くも近くも見やすくなる効果があるそうですが、一体どのような仕組みなのでしょうか。多焦点眼内レンズによる老眼矯正のメリットや注意点について、「大木眼科」の大木先生に解説してもらいました。
≫【1分動画でわかる】「老眼」は矯正できる時代に 「多焦点眼内レンズ」による視界改善効果を医師が解説
監修医師：
大木 哲太郎（大木眼科）
医学博士。日本眼科学会認定専門医として、白内障・屈折矯正手術、低侵襲緑内障手術、日帰り網膜硝子体手術を専門とする。また、ICL認定医、CTR認定医、istent認定医などの資格を保有。欧州白内障屈折矯正学会（ESCRS）フィルムアワードでイノベーション部門第1位を獲得するなど、国内外で豊富な実績を持つ。日本眼科手術学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本白内障学会、日本網膜硝子体学会、米国白内障屈折矯正手術学会（ASCRS）ESCRSの各会員。
多焦点眼内レンズで老眼も矯正できる？
編集部
老眼は、多焦点眼内レンズで本当に矯正できるのですか？
大木先生
はい。多焦点眼内レンズは、主に白内障の治療で眼内に挿入する人工のレンズですが、老眼による近方視力の低下にも効果があります。
編集部
眼内レンズにも種類があると思いますが、多焦点のレンズが老眼矯正に有効なのですね。
大木先生
眼内レンズには大きく分けて単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズがあり、単焦点眼内レンズは遠方か近方のどちらか一方しか焦点が合いません。一方、多焦点眼内レンズは複数の距離に焦点を結べるので、遠くも近くも見えやすくなります。そのため、老眼矯正にも効果があるのです。
編集部
多焦点眼内レンズで老眼を矯正することのメリットはなんですか？
大木先生
第一のメリットは、多焦点眼内レンズを使うことで、メガネに頼らず生活できる可能性が高まる点です。また、老眼が進んでいる人の多くは白内障も発症していると思われますが、白内障手術と同時に老眼も治療できることもメリットと言えます。
編集部
老眼に加えて、乱視がある場合でも大丈夫ですか？
大木先生
乱視の程度にもよりますが、乱視の矯正にも対応した眼内レンズがあるので大丈夫です。
編集部
様々なメリットがあるのですね。
大木先生
多焦点眼内レンズは白内障があり、かつ老眼で困っている人に向いているレンズです。そのほか、もともとご自身の目でピントを合わせる能力が残っているにも関わらず、手術を受けなければならなくなった若年者にも適応があります。
編集部
若い人にも向いているのですね。
大木先生
多焦点眼内レンズは年齢を問わず、「日常生活をなるべくメガネなしで過ごしたい」と考える人に有効なレンズです。そのほか、仕事や趣味の活動をする際、「近くも遠くも見えるようにしたい」と考える人にも適しています。
多焦点眼内レンズによる老眼矯正のメカニズム
編集部
多焦点眼内レンズの仕組みについて教えてください。
大木先生
多焦点眼内レンズは、白内障手術で水晶体を取り除いた後に挿入する人工レンズの一種です。保険適用の単焦点眼内レンズは狙った距離しか見えやすくならない一方、多焦点眼内レンズは遠くと近くの両方に焦点を合わせられるよう特別に設計されています。
編集部
なぜ、多焦点眼内レンズで老眼も矯正できるのですか？
大木先生
老眼は加齢によって水晶体が硬くなり、ピント調節機能が失われることで起こります。多焦点眼内レンズは、水晶体に代わって複数の距離に焦点を合わせる仕組みを持つため、ピント調整が難しい老眼の症状を補うことができるのです。
編集部
どのような仕組みで、複数の距離に焦点が合うのでしょうか？
大木先生
レンズの表面に特殊な光学デザインが施されており、入ってきた光を遠方や中間、近方などに振り分けて複数の焦点を作ります。これにより、一枚のレンズで複数の距離にピントが合う「多焦点効果」が生まれるのです。
編集部
全ての距離がはっきりとクリアに見えるようになるのですか？
大木先生
残念ながら、全ての距離が完全にクリアに見えるわけではありません。遠方・中間・近方それぞれの見え方にバランスを持たせているため、状況によっては補助的にメガネが必要になる場合もあります。
