多焦点眼内レンズによる老眼矯正の注意点
編集部
手術を受ければ誰でも使用できるのでしょうか?
大木先生
多焦点眼内レンズは、全ての人が適応となるわけではありません。強い乱視がある人、緑内障などの視神経に病気を持つ人や網膜に病気を持つ人は、見え方に制限が出る可能性があるため、術前に詳しい検査と診察が必要です。
編集部
それ以外に、治療が難しい人はいますか?
大木先生
近年、年齢による多焦点眼内レンズとの親和性についても報告がされています。高齢になると適応から外れるケースもあるので、主治医との相談が必要です。
編集部
術後に気をつけることはありますか?
大木先生
術後しばらくは見え方が安定せず、夜間に光がにじんで見える「ハロー・グレア」と呼ばれる現象が出ることもあります。通常は時間とともに慣れますが、生活に支障がある場合は医師に相談するようにしましょう。
編集部
そのほか、気をつけることはありますか?
大木先生
多焦点眼内レンズを使用すると、コントラスト感度が低下する場合がある点には注意が必要です。そのため、デザイナーや芸術家のように色や光のわずかな違いを見極めることが仕事に直結する職業では、術後に微妙な見え方の変化が支障になる場合があります。
編集部
多焦点眼内レンズを使用すると視界のコントラストが弱くなるため、支障が生じることもあるのですね。
大木先生
はい。そのほか、歯科医師のように精密な視作業を日常的におこなう人も、細部の見え方がわずかに変わるだけで仕事の精度に影響が出ることもあるでしょう。そのため、こうした職業に就いている人は、手術前に必ず医師へ相談し、自分の職業上の条件や生活に合うかどうかを十分に検討することが大切です。
編集部
手術に伴って、どのようなリスクが考えられますか?
大木先生
通常の白内障手術と同様に、感染や出血といったリスクがあります。また術後、多焦点眼内レンズ特有の見え方に違和感が残る場合もあります。そのため、事前にメリットとデメリットを十分理解することが大切です。
編集部
多焦点眼内レンズを検討する際のポイントはなんでしょうか?
大木先生
「絶対にメガネを使わない生活」を目標にするより、「メガネに頼る機会を減らす」程度の心構えをするといいかもしれません。どんなときにメガネを使いたくないのかなど、ご自分の生活スタイルや視力のニーズを医師と共有し、最適なレンズを選ぶことが成功の鍵になります。
編集部まとめ
老眼のためにメガネを使用しているという人にとって、多焦点眼内レンズはメガネなしの生活を送れるようになるための便利なツールと言えるかもしれません。ただし、職業やライフスタイルなどによって向き・不向きがあるので、気になることは事前に医師に確認し、納得してから治療を受けるようにしましょう。

