2025年度の同制度でサントリー株式会社(以下、サントリー)の主席ブレンダー・輿石太(こしいし ふとし)さんが選出されたことに伴い、2025年12月4日にメディア向けセミナーが実施された。本記事では、その様子をレポートする。

■山崎の名水がおいしさの理由に
セミナーの会場は、“日本最古の本格モルトウイスキー蒸溜所”として名高い「サントリー山崎蒸溜所」。サントリーの創業者・鳥井信治郎さんの「日本人の味覚に合うウイスキーをつくりたい」という情熱から、1923年に建設に着手した。

ここでは、ウイスキー好きなら誰でも知っている人気商品「サントリーシングルモルトウイスキー『山崎』」(以下、山崎)や「サントリーウイスキー『響』」(以下、響)、「サントリーウイスキー『角瓶』」(以下、角)などが製造されている。サントリー山崎蒸溜所がある大阪・山崎は昔から“名水の里”として有名で、その良質な水はウイスキーづくりに最適なのだとか。

まずは工場長の有田哲也さんに案内してもらい、工場内を見学。あちこちでウイスキーの香りが漂い、時折、見学ツアーの参加者のうれしそうな声が聞こえた。
サントリーでは一つの蒸溜所でさまざまな原酒を作っており、それをブレンドして唯一無二のウイスキーに仕上げるそう。原酒の仕込み、発酵、蒸溜を終えると、貯蔵庫で5年、10年、20年という年月をかけて熟成させ、輿石さんが身を置く「ブレンダー室」に行きつく。この過程が、サントリーが誇るウイスキーの奥深い味わいを作り上げているようだ。





■通常は非公開の「ブレンダー室」へ!
続いて、普段は限られた社員しか入れないブレンダー室を特別に見させてもらった。輿石さんはこの部屋で、原酒が持つ個性の見極め、原酒のブレンド、原酒の在庫マネジメントなどを行っているという。

輿石さんが所属するブレンダーチームは約10人。各々が毎日のようにテイスティングを行い、意見を持ち寄って原酒やブレンドのレシピについて話し合う。輿石さんは、「数値化できない仕事なので、チームで活動することが大切だと思っています。みんなでマスターブレンダーである鳥井信吾副会長の想いを共有しながら、どの原酒を残してどの原酒をブレンドするのかを話し合うんです。たとえば、『今年の角はこの味にしよう』などですね」と教えてくれた。

ブレンダー室の隣には「バーコーナー」があり、他社商品も含め世界中のあらゆるウイスキーが並ぶ。ここではおもにテイスティングを行うが、ただ味わうだけでなく、グラスを変えて何度も品質を確認するそうだ。ウイスキーの味を決める繊細な作業。BGMを流し、ゆったりと落ち着いた空間で行うようにしているのだとか。

■サントリー自慢のウイスキーをテイスティング
最後に、サントリーの「山崎」「白州」「知多」の3つの蒸溜所の原酒と、「響」「響 21年」「響 30年」のテイスティングをさせてもらった。

なかでも「山崎」を構成する「山崎アメリカン ホワイトオーク樽原酒」をはじめとした3つの原酒は、それぞれリンゴや洋ナシ、レーズン、ミルクキャラメルのような、個性あふれる味わい。原酒を飲んだだけでは、これが最後には一つのおいしいウイスキーになるとは到底思えないが、その複雑さが多くのファンをとりこにしているのだろう。ちなみに輿石さんは、原酒の組み合わせをすぐに思いつくタイプとのこと。
「響」はハイボールで試飲。華やかな香りや透きとおった甘味に炭酸のさわやかさが加わり、次々と口にしてしまう飲みやすさだ。テイスティングの結果、普段あまりウイスキーを飲まない筆者だが、ドライフルーツのような甘味とほのかなスパイシーさを感じる「響 21年」がお気に入りに。いつか自分へのご褒美や両親へのプレゼントとして購入したいと思った。

「山崎」を筆頭に、世界的人気を博しているサントリーのウイスキー。その裏側には、今日まで引き継がれる創業者の想いと、ブレンダーによる徹底した品質管理があった。工場見学ツアーも実施されているので、あらためてその魅力に触れてみてはいかがだろうか。
取材・文=ウォーカープラス編集部
写真=福羅広幸
※20歳未満の者の飲酒は法律で禁じられています。
※記事内に価格表示がある場合、特に注記等がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

