胆嚢摘出後に不調が続く? 「胆嚢摘出後症候群」を医師が解説

胆嚢摘出後に不調が続く? 「胆嚢摘出後症候群」を医師が解説

中路 幸之助

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

胆嚢摘出後症候群の概要

胆嚢(たんのう)摘出術を施行した後に、術前と同じ症状が持続したり、術前になかった消化器系の症状が出現したりする状態を「胆嚢摘出後症候群」と呼びます。胆嚢摘出術は、胆石で持続的な腹痛が続く場合や、胆嚢炎の合併症が発症している場合などに適応されます。

胆嚢は腹部の右上、肝臓の奥に位置する臓器です。肝臓でつくられた胆汁を貯蔵し、食事のときに放出させて、脂肪の吸収や消化を助けます。

胆嚢を摘出すると胆嚢疾患に関連する症状は改善しますが、乳頭括約筋(十二指腸の乳頭部にある胆汁の流れを調節する筋肉)の機能が低下したり、胆汁の代謝が変化したりすることがあります。これらの異常により、胆汁の流れが阻害され、胆管や総胆管(胆嚢から十二指腸に胆汁を流す管)の内圧が上昇し、下痢や吐き気、腹痛、腹部膨満感、黄疸などの症状が現れることがあります。

胆嚢摘出後症候群の症状は、術後3〜4割の患者に発症し、そのうち約半数が追加の治療を必要とすることがわかっています。

診断には、血液検査による炎症反応や肝臓の機能などの評価、超音波検査やCTスキャンなどの画像診断、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)による胆道内圧の測定などがおこなわれます。

時間の経過とともに自然に治るケースもありますが、症状の原因や重症度に応じて薬物療法や内視鏡的乳頭括約筋切開術が検討されることもあります。(出典:一般財団法人日本消化器病学会「胆石症診療ガイドライン2021(改定第3版)」)

胆嚢摘出後症候群

胆嚢摘出後症候群の原因

胆嚢摘出後症候群の主な原因は、胆嚢摘出術後に乳頭括約筋の機能低下(乳頭括約筋不全)や胆汁の代謝変化が起こることです。

乳頭括約筋不全は、胆嚢摘出術によって胆嚢からの神経伝達が阻害され、筋肉の攣縮(一時的に筋肉が縮むこと)が起こることによって生じます。胆汁の代謝変化は、胆嚢による胆汁の貯蔵機能が失われることにより生じます。

その他、手術による胆管損傷や腹腔内への胆石の落下、腹壁瘢痕ヘルニア、総胆管などの胆石残存、新たな胆石形成なども原因になることがあります。

配信元: Medical DOC

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