自身の性被害を題材としたドキュメンタリー映画で使用された映像をめぐり「物言い」がついているジャーナリストの伊藤詩織さんは12月15日、東京丸の内の日本外国特派員協会で記者会見に臨んだ。
●「日本企業が自主規制で配給しない判断をしたのでは」
伊藤さんの作品『Black Box Diaries』は、防犯カメラ映像の使用や、出演者たちへの許諾が得られていないなどの指摘を受けて、日本では公開が見送られてきた。だが、修正を施したバージョンが12月12日から国内で公開されている。
プロデューサーのエリック・ニアリ氏は「サンダンス映画祭(米国)で2024年にプレミア上映された。そのときの戦略としては、権威ある国際映画祭で上映して、注目や賞賛を集めて、日本(の映画祭)で上映しようと思っていた」と振り返った。
海外から配給のオファーが届いた一方で、日本については「複雑だった」と明かした。
「日本企業がセルフセンサーシップ(=自主規制)で、政府との関係やいろんな企業、関係ない企業との関係性を考慮して、配給しないという判断をしたのではないでしょうか。
さまざまな事情があって日本での上映が遅れました。また、伊藤さんの弁護士が会見してから、ことが複雑になりました」(ニアリ氏)
映像の許諾をめぐり、日本での配給戦略を考え直さなければいけなかったという。
●元代理人の指摘は「嘘なんです。事実ではありません」
伊藤さんも「海外からのストリーミングプラットフォームからオファーがありましたが、日本支社からダメが出されたということで違う道を選びました。日本で上映することを私たちが拒んでいたわけじゃありません」と語り、「ようやく日本で上映できて、感謝でいっぱいです」と話した。
一方、上映にはこぎつけた現在も、ホテルの防犯カメラや関係者の映像、音声の許諾の問題がクローズアップされてきた。昨年10月に元代理人の西広陽子弁護士らの会見によって「事実でないことをお話しされ、それが広まってしまい、ずっと続いてきました」(伊藤さん)。
そのうえで、西広弁護士が修正版について「伊藤さんから事前に見せてもらえなかった」などとコメントしたことについては、「嘘なんです。事実ではありません」と指摘。「ファクトチェックなしに、彼らの言葉だけが広がってしまったことを残念に思いました」と話した。

