境界性パーソナリティ障害の特徴的な症状には、自己認識の不安定さや感情の波が含まれます。心の問題が日常生活にどのように影響を与えるか、そしてそれにどのように対応すべきかについて筑波大学精神神経科の松崎朝樹先生に詳しく伺いました。
編集部
考え方や心の問題では、どのような症状が現れますか?
松崎先生
「同一性の障害」というものがあります。これは、なりたい職業が頻繁に変わったり、目標や価値基準が絶えず変動して一貫性がなかったりするような症状で、境界性パーソナリティ障害の特徴の一つでもあります。さらに、「慢性的な空虚感」と言って、虚しさを感じる状態が継続するような症状があります。この症状は比較的目立たないものの、本人は長い間苦しんでおり、うつ病を疑って受診する場合もあります。
編集部
その他、自分自身の感情や気分で見られる症状はありますか?
松崎先生
「怒りの制御困難」という症状が見られる場合があります。一般的には怒ることではない些細なことでも、自分の感情を抑えきれずに怒ってしまうような症状です。この症状に、本人自身が苦しんでいることもしばしばあります。また、「自分を傷つけうる衝動」が見られることもあります。薬物依存やギャンブル依存、過食など、自分に害があると分かっているにも関わらず、自分を大切にしないような行動を衝動的にしてしまう人もいます。
編集部
境界性パーソナリティ障害の人との接し方について教えてください。
松崎先生
境界性パーソナリティ障害の人は対人関係でストレスを感じやすいため、関わる人は上から目線で物事を言わない、正確な情報を伝えることが重要です。また、何かトラブルが発生した際には、叱ったり拒絶したりせずに、まずは受け入れることが重要です。叱って反省させるだけでは解決しづらい場合が多いため、拒絶するのではなく、問題を解決する方法を本人と一緒に考えることが大切です。一方で、起こった問題については本人も責任を取る必要があります。精神障害による問題だからといって責任を免れるのではなく、責任能力を考慮して適切に対処することが必要です。

監修医師:
松崎 朝樹(筑波大学精神神経科)
1998年筑波大学卒業。埼玉県立精神医療センター、筑波大学附属病院、国立精神・神経医療研究センターなどの勤務を経て、2014年より筑波大学精神神経科講師。医学生への講義ではベストティーチャー賞を多数受賞。著書:『精神科診療プラチナマニュアル』(MEDSi)、『教養としての精神医学』(KADOKAWA)ほか多数。
※この記事はメディカルドックにて【「境界性パーソナリティ障害」の特徴的な症状9つを精神科医が解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
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