パーキンソン病を発症すると姿勢反射障害になる原因
人の身体には、倒れそうになったときに倒れないように姿勢を反射的に直す反応がもともと備わっています。しかし、パーキンソン病の方ではそういった反応がうまく働かず、転びやすさにつながる場合があります。以下では、パーキンソン病の場合に姿勢反射障害になる原因について解説します。
脳の基底核関連のバランス維持がそこなわれる
パーキンソン病では、姿勢やバランスの調整に欠かせない「基底核」の働きが低下します。基底核の機能が弱まることで重心のコントロールが難しくなり、バランスを崩したときに踏ん張る力が十分に出せなくなります。そのため、方向転換が遅れたり、予期せぬ揺れに対応できず転倒しやすくなったりします。こうした症状がみられる場合には、神経内科での評価が必要となります。
視覚によるバランス制御が難しくなる
パーキンソン病では、視覚情報を処理する速度が遅くなったり、空間の位置関係を把握する力(視空間認知)が低下したりすることがあります。こうした変化が生じると、階段や段差を判断するのに時間がかかったり、暗い場所での動作が急に不安定になったりするなど、日常動作に支障が出ます。視覚から得られる情報をもとに姿勢を安定させることが難しくなるため、姿勢反射障害がさらに悪化することがあります。
頭の位置などを感知する能力が低下する
姿勢の維持には、耳の奥にある前庭器官が頭の傾きや動きを感知する働きと、筋肉や関節の動きを感じ取る固有受容感覚が欠かせません。パーキンソン病では、これらの感覚の統合がうまくいかなくなり、身体の位置を正確に把握しにくくなります。その結果、体がどちらかに傾いても自覚しづらく、無意識のうちにバランスを崩してしまうことがあります。このような症状が続く場合には、神経内科を受診し、必要に応じてリハビリテーション科でのバランストレーニングが推奨されます。
パーキンソン病になりやすい人の生活習慣
パーキンソン病の発病危険因子としては、60歳以上の高齢、男性、家族歴などが報告されています。ただし、日本では女性の方が発症頻度が高いため、世界的な報告とは異なります。以下では、パーキンソン病になる可能性を高めるかもしれないと考えられている生活習慣などについて解説します。
運動不足
運動不足は、パーキンソン病発症の危険性を高める可能性があります。
動物の研究では、運動をすると体の中の炎症が減り、パーキンソン病に関係するたんぱく質(α-シヌクレイン)の異常が少なくなり、細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアの働きもよくなることが報告されています。さらに、神経を守ったり育てたりする物質(神経栄養因子)が増える可能性があるとも言われています。運動不足や身体活動の低下がみられると、こうした作用が期待できなくなる可能性があります。
慢性的な不眠症
慢性的な不眠症は、パーキンソン病のリスクを高める可能性があります。慢性不眠症が3ヶ月以上続く方のリスクが最も高かったとする報告もあります。
ただし、すでにパーキンソン病になりかけているために不眠症があるのかなど、まだ解明されていない部分もあります。
「夜寝られない」「睡眠の質が低下している」といったことが続く場合は、睡眠外来など、専門家に相談するようにしたほうがよいでしょう。
特定の農薬に晒される仕事についている
パラコートやロテノン、有機リン系、有機塩素系などの農薬は、パーキンソン病の発症率の増加と関連していることが示されています。農薬に暴露されることで、パーキンソン病に関連する遺伝子の変異などが起こり、病気につながるのではと示唆されています。

