不整脈の発生には、年齢による心臓の変化や遺伝的な体質が深く関与しています。加齢とともに心臓の構造や機能が変化することで、不整脈のリスクが高まることが知られています。また、生まれつきの体質や遺伝的な要因により、若年者でも不整脈を起こしやすい方がいらっしゃるのです。ここでは、加齢による影響と遺伝的要因について、それぞれの特徴と注意点を解説します。

監修医師:
小坂 真琴(医師)
2022年4月~2024年3月、今村総合病院(鹿児島県鹿児島市)で初期研修を修了
2024年4月よりオレンジホームケアクリニック(福井県福井市) 非常勤医師として在宅診療を行いながら、福島県立医科大学放射線健康管理学講座大学院生として研究に従事
2025年10月よりナビタスクリニックに勤務
週1度、相馬中央病院 (福島県相馬市) 非常勤医師として内科外来を担当
年齢や体質に関連する不整脈の原因
不整脈の発生には個人の体質や年齢が深く関わっています。加齢による心臓の変化や遺伝的要因を理解しておくことで、適切な予防や管理につながるでしょう。
加齢による心臓の変化と不整脈
年齢を重ねることで、心臓の構造と機能には自然な変化が生じます。加齢に伴い心房や心室の壁が厚くなり、心筋の弾力性が低下するため、不整脈が起こりやすくなるのです。
洞結節と呼ばれる心臓のペースメーカー機能を持つ部分も、加齢により細胞数が減少し機能が低下します。その結果、洞性徐脈や洞不全症候群といった徐脈性不整脈のリスクが高まります。房室結節や伝導路においても加齢による変性が進むため、房室ブロックの発生頻度も年齢とともに増加するのです。
高齢者では心臓の予備能力が低下しているため、不整脈による症状が若年者よりも強く現れる傾向があります。ただし、加齢による変化は個人差が大きく、高齢でも規則正しい生活習慣を維持することで、不整脈のリスクを軽減できる可能性があるでしょう。
遺伝的要因と体質による原因
不整脈の中には遺伝的な要因が強く関与するものがあります。QT延長症候群やブルガダ症候群といった遺伝性不整脈症候群は、イオンチャネルの遺伝子変異により、若年者でも致死的な不整脈を起こすリスクがあるのです。
家族内で若年での突然死や失神の既往がある場合には、これらの遺伝性疾患の可能性を考慮し、専門医による評価を受けることが重要です。遺伝子検査により診断が確定すれば、予防的な治療や生活指導が可能となります。心房細動にも遺伝的素因が関与することが明らかになっており、家族歴がある方では発症リスクが高まることが報告されているでしょう。
自律神経の緊張度も体質による個人差があり、交感神経が優位な方は頻脈性不整脈を、副交感神経が優位な方は徐脈性不整脈を起こしやすい傾向があるとされています。スポーツ心臓と呼ばれる状態では、長期間の激しい運動により心臓が適応変化を起こし、安静時の心拍数が低下します。これ自体は病的ではありませんが、時に期外収縮などの不整脈を伴うことがあるのです。
まとめ
不整脈は誰にでも起こり得る症状ですが、その中には生命に関わる危険なものも含まれます。動悸や胸の違和感、めまいといった症状を感じた際には、自己判断せずに医療機関を受診することが重要です。特に失神や強い胸痛を伴う場合には、速やかな受診が求められるでしょう。
不整脈の原因は心臓の疾患だけでなく、ストレスや生活習慣、加齢など多岐にわたるため、総合的な評価が必要となります。適切な診断と治療により、多くの不整脈は良好にコントロールでき、突然死のリスクも大幅に軽減できるのです。気になる症状がある方は、循環器内科の専門医にご相談ください。
参考文献
国立循環器病研究センター「不整脈」

