仮釈放され、社会で生活しているにもかかわらず選挙権が認められないのは憲法に違反するとして、高松市の八木橋健太郎さん(39)が、選挙人名簿に登録されなかったことへの異議申出を棄却した決定の取り消しを求める訴訟を高松地裁に起こした。
八木橋さんは、刑務所に収容されていた当時にも、受刑者の選挙権が制限されていることの違法性をうったえて提訴している。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●公選法により「選挙人名簿」に登録されず
八木橋さんの代理人によると、訴状は12月11日付で高松地裁に発送したという。
八木橋さんは、約2億円相当の仮想通貨「ビットコイン」をだまし取ったとして警視庁に逮捕され、2019年9月に懲役7年の実刑判決が確定した。2025年7月末、兵庫県の加古川刑務所から仮釈放されている。
訴状によると、八木橋さんは仮出所後、高松市内で生活を始めた。転入から3カ月が経った後の、最初の選挙人名簿登録日である12月1日、高松市選挙管理委員会は八木橋さんを名簿に登録しなかった。
八木橋さんは翌12月2日、名簿に登録するよう求めて市選管に異議を申し出たが、市選管は12月4日付で棄却する決定をした。
棄却の理由として示されたのが、公職選挙法11条1項2号だ。同条は、選挙権を有しない者として「拘禁刑以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者」を定めている。
●仮釈放は「国家が認めて許可される」
これを受けて、八木橋さんは異議申出を棄却した市選管の決定の取り消しを求めて提訴した。
訴状では、最高裁が2005年の在外選挙権訴訟で示した「やむを得ない事由」がない限り選挙権を制限することは許されないとする判例を引用。「受刑者の選挙権を一律かつ自動的に制限すべき『やむを得ない事由は存在しない』」として、公職選挙法11条1項2号は憲法に違反すると主張している。
また、仮釈放は「社会で暮らすことが適当であると国家が認めて許可される」ものであり、「引き続き選挙権を制限するべき理由はない」と指摘した。

