
監修医師:
渡邊 雄介(医師)
所属
国際医療福祉大学教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長
遅発性内リンパ水腫の概要
遅発性内リンパ水腫は、高度な難聴が生じた数年〜数十年後、耳の器官の一番奥にある内耳に内リンパというリンパ液がたまって、回転性のめまいが繰り返し起こる疾患です。
幼児期ごろに何らかの原因で片側もしくは両側の耳に高度な難聴が生じた後、長い年月を経て症状がでた内耳の前庭(全身のバランス感覚をつかさどる器官)に内リンパ液がたまることで発症します。前庭に内リンパ液がたまることで機能が低下し、目の前がぐるぐる回るような回転性めまいが生じます。
日本では4,000〜5,000人が遅発性内リンパ水腫を発症しており、国の指定難病に登録されています。
患者の約半数が9歳以下に高度な難聴や全ろう(耳が全く聞こえないこと)を発症しています。また突発性難聴やムンプス難聴によって遅発性内リンパ水腫が起こることも報告されています。難聴や全ろうから遅発性内リンパ腫に移行する原因ははっきりとわかっていません。
遅発性内リンパ水腫は根本的な治療法がなく、対処療法が基本となります。
発作の原因となる生活環境やストレス状況を取り除いたり、利尿剤や有酸素運動によってリンパ液の循環を良くしたりして、症状の緩和を図ります。これらの治療で改善が認められない場合は、中耳加圧療法や内リンパ嚢開放術、ゲンタマイシン鼓室内注入術などの侵襲的な治療をおこなうことがあります。
遅発性内リンパ水腫は重症化すると難聴やめまいが永続的に続き、高齢者の場合は転倒により骨折したり、認知症になったりする原因にもなります。
疑わしい症状が見られたら、できるだけ早く耳鼻咽喉科で適切な治療を受けることが重要です。

遅発性内リンパ水腫の原因
遅発性内リンパ水腫が起こる原因は明らかになっていません。
先行して見られる難聴の原因は、約6割が不明ですが、突発性難聴やムンプス難聴でも起こると言われています。

