お礼参り(仕返し)の恐怖を考えると心配は絶えません──。
来年4月から適用される「第5次犯罪被害者等基本計画」をめぐって、2016年にファンの男性に刃物を刺されて重傷を負った冨田真由さんの母親らが12月15日、東京都内で記者会見を開いた。
加害者が出所した後に住むエリアを、被害者側が把握できる仕組みを導入するよううったえた。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●第5次基本計画は来年4月からの5年間
音楽活動をしていた冨田さんは、当時20歳だった2016年5月、東京都小金井市でファンの男性に刃物で刺され、重傷を負った。
加害者は殺人未遂罪で懲役14年6カ月の実刑判決が確定し、刑務所に服役しているとみられる。
この日、「犯罪被害者支援弁護士フォーラム」の事務局長をつとめる高橋正人弁護士らが東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた。
出所後の仕返しを恐れている被害者が少なくないとして、加害者の帰住先情報を被害者側に提供する仕組みの必要性をうったえた。
2005年に「犯罪被害者等基本法」が施行されたことに伴い、国は犯罪被害者を支援する基本方針をまとめた「犯罪被害者等基本計画」を同年12月に策定した。
基本計画は5年に1度のペースで見直されており、「第5次犯罪被害者等基本計画」は2026年4月から2031年3月までの5年間に適用される。
●進展ない「加害者の帰住先情報の提供」
高橋弁護士によると、加害者の服役中の態度や出所時期を被害者側が知ることができるようになったが、出所後の住まいの情報提供については今も仕組みがなく、第1次の基本計画からほとんど変わっていないという。
高橋弁護士はこうした状況に懸念を示す。
「犯罪被害者として、加害者の詳しい住所を教えてほしいというわけではない。たとえば、『千代田区』といったエリアだけでもわかれば、被害者はそこから逃げることができる。そうした身を守るための情報を最低限提供してほしい」

