体重40キロ台、車椅子生活でも「強制送還」…収容11年のパキスタン男性に非情な通告

体重40キロ台、車椅子生活でも「強制送還」…収容11年のパキスタン男性に非情な通告

●通知ルールを無視した送還強行

入管問題に取り組む弁護士らの尽力により、これまで代理人がついている人については、退去強制令書が出されても、通知希望申出書を提出していれば、入管が原則として執行の2カ月前に送還時期を通知する運用がされてきた。

しかし現在、入管はこうしたルールを事実上無視し、送還に耐えられない健康状態の男性を強制送還しようとしている。

自身が難民であることをうったえながら、男性は入管の不当な処遇に対し、徒手空拳で闘ってきた。かつてカシミール独立の闘士だった彼は、今、気力だけで生きている。

●「送還停止効例外」の急増が示すもの

出入国在留管理庁の公表資料によると、今年の護送管付き国費送還者における「送還停止効例外」の適用件数は、1~5月(5カ月間)で84人中6人だったのに対し、6~8月(3カ月間)は119人中36人に上っている。

法務省が今年5月、「国民の安全・安心を守るための不法滞在者ゼロプラン」を公表して以降、国は「送還停止効例外」を適用した強制送還を前のめりで進めている。

こうした姿勢は、日本には「送還すべき人が多くいる」という印象を与える。しかし実際には、退去強制令書が出た人の約9割は自費で出国している。

送還に応じない人たちの多くは「帰らない」のではなく、「帰れない」事情を抱えている。

制度のはざまで在留資格を失いながら、20〜30年以上にわたり日本社会に定着してきた人たちが、すでに生活基盤のない母国へ、リスクを伴う帰国を強いられているのだ。

難民認定率が2.2%(2024年)にとどまる日本において、仮放免者や収容者は、かつてないほど厳しい状況に置かれている。

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