何が陽性だと「橋本病」と診断される?【医師監修】

何が陽性だと「橋本病」と診断される?【医師監修】

橋本病の診断は、臨床症状、血液検査、画像検査の所見を総合して行われます。また、症状や検査所見が似ているほかの甲状腺疾患との鑑別も重要です。バセドウ病や亜急性甲状腺炎といった類似疾患との違いを理解することで、正確な診断と適切な治療選択が可能になります。

濵﨑 秀崇

監修医師:
濵﨑 秀崇(医師)

東京大学理学部卒業、広島大学医学部卒業。国立国際医療研究センター病院、国府台病院勤務を経て、2024年9月より「うるうクリニック関内馬車道」に勤務。糖尿病を専門に、内科疾患および内分泌疾患を幅広く診療している。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本体力医学会評議員。

橋本病の診断基準と鑑別診断

橋本病の診断は複数の所見を総合して行われます。臨床症状、検査所見、画像所見を組み合わせて判断し、症状や検査所見が似ているほかの疾患との鑑別も重要です。

診断基準の構成要素

橋本病の診断基準には、臨床症状、身体所見、血液検査、画像検査の所見が含まれます。明確な国際的統一基準があるわけではありませんが、一般的には以下の項目を満たす場合に診断されます。

まず、抗甲状腺自己抗体(抗TPO抗体または抗Tg抗体)が陽性であることが重要な診断根拠となります。これにより自己免疫性甲状腺疾患であることが示されます。次に、超音波検査で特徴的な所見(びまん性腫大、内部エコーの不均一性、低エコー像)が認められることが診断を支持します。

甲状腺機能については、機能低下を示すTSH高値とFT4低値があれば診断はより確実になりますが、機能が正常な段階でも橋本病と診断されることがあります。この場合は「橋本病(機能正常)」または「潜在性甲状腺機能低下症を伴う橋本病」といった表現が用いられます。

触診での甲状腺の性状も参考になります。橋本病では触るとやや弾力があり、押しても痛みはないのが特徴で、表面が凸凹していることが多いです。圧痛は通常認められません。

ほかの甲状腺疾患との鑑別

橋本病では、病期によって甲状腺機能が正常〜低下へと変化していきますが、一部の人では一時的に甲状腺ホルモンが高くなる「破壊性甲状腺炎(ハシトキシコーシス)」を起こすことがあります。このような状況では、バセドウ病などの別の甲状腺疾患と似た症状が出るため、原因を見分けるための鑑別診断が重要です。

バセドウ病

自己免疫反応によって甲状腺が過剰に働く疾患で、動悸・体重減少・汗をかきやすいといった症状がみられます。抗TSH受容体抗体(TRAb)が陽性となり、超音波検査では血流増加が特徴的です。橋本病の経過中にバセドウ病へ移行する例も報告されており、双方が併存することもあります。

無痛性甲状腺炎(破壊性甲状腺炎)

橋本病を背景に起こることが多く、甲状腺の細胞が壊れることで一過性に甲状腺ホルモンが過剰になる状態です。痛みは伴わず、通常は数週間〜数ヶ月で自然に回復し、甲状腺機能が正常化または低下へ移行します。バセドウ病との区別には、抗TSH受容体抗体の有無や甲状腺血流の評価が役立ちます。

亜急性甲状腺炎

ウイルス感染後に起こるとされる炎症性疾患で、発熱や強い甲状腺の痛み、圧痛が特徴です。血液検査では炎症反応(CRPや赤沈)の上昇がみられます。橋本病とは症状・経過が大きく異なるため、臨床上は比較的区別しやすい疾患です。

甲状腺結節性疾患

橋本病では甲状腺が全体的に腫れることが多いのに対し、結節性甲状腺腫や甲状腺腫瘍では限局したしこりとして触れるのが一般的です。超音波検査や細胞診により、良性・悪性の評価やほかの疾患との鑑別が行われます。橋本病に結節が併存するケースもあるため、注意深い経過観察が必要です。

まとめ

橋本病は適切な診断と治療により、日常生活への支障を最小限に抑えることができます。疲労感やむくみといった症状が続く場合や、家族に甲状腺疾患の方がいる場合には、甲状腺機能の検査を受けることが推奨されます。早期発見と継続的な治療により、良好な生活の質を維持できる疾患です。気になる症状がある方は、内科や内分泌内科を受診されることをおすすめします。

参考文献

日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン」

日本内分泌学会「橋本病(慢性甲状腺炎)

Familial risks between Graves disease and Hashimoto thyroiditis and other autoimmune diseases in the population of Sweden

Minerals: An Untapped Remedy for Autoimmune Hypothyroidism?

Cancer Risk in Hashimoto’s Thyroiditis: a Systematic Review and Meta-Analysis

配信元: Medical DOC

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