映画のようなプロポーズで結婚した由美子は、夫・哲司のために転職するなど尽くしてきました。だが、新婚生活はけんかばかり。ある日、置きっぱなしの哲司の仕事用タブレットから、結婚前から入籍直後まで続く、複数の女性との不倫の証拠を発見し、怒りに震えることに―――。
運命の相手だと思った
はじめまして。私の名前は由美子、25歳。今はクリニックでパートの看護師をしています。たった2年前まで、私は大学病院の忙しい病棟で働いていました。でも、今はもうあのころの自分とは別人のようです。
夫の哲司は28歳。アプリで出会い、恋に落ちるのに時間はかかりませんでした。彼は営業職で、いつもエネルギッシュで情熱的。私にとって、彼との出会いは運命だと思えるほどでした。
出会って1年少しで婚約。2年目に入る直前には、両家の顔合わせと入籍を済ませました。
愛する人の全てを捧げてきた
プロポーズは、本当に凝っていて。私たちが出会ったカフェを貸し切りにして、友人たちにも協力してもらい、まるで映画のようなサプライズでした。
「由美子、一生かけて君を幸せにする。僕の妻になってくれ」
あの時の彼の真剣な眼差しに、私は迷いなく頷いたんです。だけど、当時は仕事が忙しくて…。結局挙式をあげることもできずにいました。
私は彼を支えたくて、総合病院の忙しい毎日から、少し時間に融通の利くクリニックへ転職しました。住んでいた家も解約し、迷いなく彼の元へ飛び込みました。結婚は、愛する人のために全てを捧げるものだと信じていましたから。
ところが、新婚生活が始まってすぐに、私たちの日常は一変しました。新婚のはずなのに、けんかばかり。ささいなことで言い争いになり、お互いに歩み寄る努力すらできなくなっていました。私は「新生活にストレスは付き物」と、自分を納得させようとしていました。
「ねえ、哲司。結婚前のデートの写真を整理しない?」
少しでも仲が良かったころを思い出そうと私がそう声をかけると、哲司はいつも「今度な」と、ろくに目も見ずにスマホをいじるばかり。私たちが計画したはずの新婚旅行は、結局「仕事が立て込んだ」という彼の都合でキャンセルになったきり、ずっと宙ぶらりんでした。

