勤務先の小学校の女子トイレで、女子児童3人を盗撮したなどとして、性的姿態等撮影と児童ポルノ禁止法違反の罪に問われた相模原市立小学校元教員の20代男性に対し、横浜地裁相模原支部は12月16日、懲役2年、執行猶予4年の判決を言い渡した。
保護者の意向もあり、被害に遭った児童本人は盗撮された事実を知らされていない。弁護人によると、被害児童のうち2人の保護者との間で示談が成立しており、被告側は控訴しない方針だ。
裁判所は、被害児童や保護者だけでなく、学校現場に与えた影響も大きいと指摘した。
●保護者は健全な成長を願い、娘に事実を伝えず
判決要旨などによると、被告人は今年5月18日ごろと6月4日ごろ、勤務校の小学校の女子トイレ個室に小型カメラを設置し、当時11〜12歳の女子児童3人の性器などを撮影し、映像を記録して保存したとされる。
横浜地裁相模原支部の和久登貴子裁判官は、判決理由で「小学校教員でありながら、自らの性的欲求等を満たすため、勤務先小学校内の女子トイレの個室内に小型カメラを設置して、女子児童らの尊厳を害する本件各犯行に及んだ」と認定した。
量刑の考慮では、犯行の悪質性や被害の深刻さに加えて、周囲への影響にも言及があった。
「娘が盗撮されたことを知った保護者の受けた衝撃は大きく、被告人の厳罰を求める保護者がいるのも当然である。いずれの保護者も、娘に精神的苦痛等を与えないため盗撮被害に遭った事実を伝えることなく、配慮し健全に成長するよう見守ろうとしている。学校現場に与えた影響も大きい」
一方で、被害児童のうち2人については、それぞれ50万円と70万円を支払う内容で示談が成立していることや、被告人が犯行後に診断された「性嗜好障害」の治療に取り組んでいることなどを踏まえて、執行猶予付きの判決とした。
今年6月の刑法改正で拘禁刑が導入されたが、今回のケースでは起訴された2つの事件が施行日前後にまたがっていることから、検察側は拘禁刑ではなく、従来の懲役刑を求刑していた。
●法廷で謝罪した元教員、「収集」が目的化
被告人は起訴内容をすべて認め、論告求刑公判では、被害児童や保護者、学校関係者に対して「信頼を裏切り、心に深い傷を負わせてしまった」と述べ、謝罪した。
弁護側は、犯行に及んだ動機について、当初は性的目的だったが、次第に「収集」手段が目的化し、精神状態が正常とは言えないものだったなどと主張した。
判決後、弁護人は、こうした主張も量刑判断に考慮されたのではないかとの認識を示した。
相模原市は、被告人を逮捕後に懲戒免職とし、教員免許は失効している。また、この事件を受けて、市は10月31日、盗撮カメラ探知機を用いた不定期の巡回点検などの実施を公表した。
(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

