「虫垂炎を1週間放置」するとどうなるかご存知ですか?現れる症状も解説!

「虫垂炎を1週間放置」するとどうなるかご存知ですか?現れる症状も解説!

急性虫垂炎は、盲腸の先にある細い袋状の臓器である虫垂に炎症や感染が起こる病気です。年齢を問わず起こりますが、特に若い世代でよくみられ、腹痛の原因として頻度が高い病気の一つです。早く受診して治療を始めれば、多くの患者さんは大きな後遺症を残さず回復します。しかし痛みを我慢して放置すると、虫垂に穴が開いておなか全体に炎症が広がり、命に関わる状態になることがあります。ここでは、虫垂炎を1週間放置した場合に起こりうる経過と、その後の治療や合併症のリスクを説明します。

高宮 新之介

監修医師:
高宮 新之介(医師)

昭和大学卒業。大学病院で初期研修を終えた後、外科専攻医として勤務。静岡赤十字病院で消化器・一般外科手術を経験し、外科専門医を取得。昭和大学大学院生理学講座生体機能調節学部門を専攻し、脳MRIとQOL研究に従事し学位を取得。昭和大学横浜市北部病院の呼吸器センターで勤務しつつ、週1回地域のクリニックで訪問診療や一般内科診療を行っている。診療科目は一般外科、呼吸器外科、胸部外科、腫瘍外科、緩和ケア科、総合内科、呼吸器内科。日本外科学会専門医。医学博士。がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会修了。JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)修了。ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)。BLS(Basic Life Support)。

虫垂炎を1週間放置した場合に起きること

虫垂炎を1週間放置した場合に起きること

虫垂炎の症状や原因を教えてください

急性虫垂炎は、虫垂の中が何かでふさがれることがきっかけで起こると考えられています。便のかたまりである糞石や、リンパ組織の腫れなどが原因として知られており、そこに腸内細菌が増えることで炎症や感染が進みます。

症状として多いのは腹痛です。最初はおへその周りやみぞおち付近の、場所がはっきりしない鈍い痛みから始まり、数時間ほどで右下腹部の鋭い痛みに変わることが典型的です。歩く、咳をする、身体を揺らすなどの動きで痛みが強くなることもよくあります。

そのほかに、37〜38度前後の発熱、吐き気や嘔吐、食欲が落ちる、下痢や便秘などの消化器症状がみられることがあります。高齢の方や妊娠中の方、小さな子どもの場合は症状がわかりにくく、典型的な経過をとらないこともあります。

虫垂炎は何もせずに治る病気ですか?

一時的に痛みが軽くなったり、熱が下がったりすることはありますが、虫垂炎が自宅で自然に安全に治ると考えるのは危険です。実際には、炎症の程度が軽い初期の段階であっても、虫垂の内側がふさがった状態が続けば、いつ悪化してもおかしくありません。

最近は、画像検査などで軽い虫垂炎と判断された一部の患者さんに対して、手術ではなく抗菌薬の点滴だけで経過をみる治療も検討されるようになっています。ただし、この判断は血液検査や超音波検査、CT検査などの結果を総合して医師が慎重に行います。自己判断で様子をみることと、病院で状態を確認した上で経過をみることは意味が大きく異なります。

何もせずに放置すれば、炎症が進んで穿孔や腹膜炎に至る危険性があるため、虫垂炎が疑われるときに自宅での様子見はすすめられません。

虫垂炎を治療せずに1週間放置するとどのような経過を辿りますか?

虫垂炎は時間とともに悪化しやすい病気であり、症状が出てから治療までの時間が長くなるほど、虫垂に穴が開く穿孔のリスクが高くなることがわかっています。研究では、おおよそ36時間を過ぎた頃から穿孔の危険が高まり、数日たつと穿孔の割合が明らかに増えると報告されています。

治療を受けずに1週間経過した場合、多くの患者さんではすでに虫垂が穿孔しているか、周囲に膿がたまって膿瘍を作っている可能性が高いと考えられます。虫垂が破れてすぐの段階では、一時的におなかの圧力が下がって痛みが和らいだように感じることがあります。しかし、その後は細菌や膿が腹腔内に広がり、おなか全体が痛む腹膜炎の状態へ進むことがあります。

この段階では高い熱、強い腹痛、吐き気や嘔吐、身体のだるさや息苦しさなどが出て、歩くこともつらくなりやすいです。重症になると血圧が下がる、意識がぼんやりするなど、敗血症と呼ばれる命に関わる状態に陥ることもあります。1週間放置された虫垂炎は、このように重症化している前提で考える必要があります。

1週間放置した虫垂炎の治療法

1週間放置した虫垂炎の治療法

1週間放置した虫垂炎はどのように治療しますか?

1週間放置された虫垂炎では、すでに穿孔や膿瘍、腹膜炎を起こしていることが多く、原則として入院治療が必要になります。治療の柱は、全身状態の安定化、抗菌薬による感染のコントロール、そして必要に応じた手術です。

おなか全体の強い腹膜炎がある場合や、血圧低下などのショック状態がある場合は、点滴で水分や電解質、必要に応じて昇圧薬を投与しながら、緊急手術で炎症の原因となっている虫垂と汚染された腹水を処理します。

一方で、膿が一か所に集まって膿瘍を作っている場合には、画像検査で場所を確認し、皮膚から針を刺して膿を外に出す穿刺排膿と、点滴の抗菌薬で炎症を落ち着かせる方法が選ばれることがあります。この場合、炎症が十分に落ち着いてから、数ヶ月後にあらためて虫垂を切除する手術を検討することもあります。

早期に受診した虫垂炎と1週間放置した虫垂炎の治療法は異なりますか?

症状が出てすぐに受診した場合、虫垂にまだ穴が開いていない単純性虫垂炎でみつかることが多く、腹腔鏡手術による虫垂切除と短期間の抗菌薬投与で治療が完了するケースが多いです。入院期間も数日程度で済むことがよくあります。

一方、1週間放置された虫垂炎では、多くが穿孔や膿瘍を伴う複雑な虫垂炎に分類され、手術自体も難しくなります。腹腔内の洗浄やドレーンと呼ばれる管の留置、術後の長期にわたる抗菌薬投与が必要になることがあり、入院期間も長くなりやすいです。

また、膿瘍が大きい場合には、前述のようにまず抗菌薬と排膿で炎症を落ち着かせてから、後日に手術を行う二段階治療が選ばれることもあります。早期に受診した場合と比べると、治療の選択肢が複雑になり、身体への負担も大きくなりやすいといえます。

1週間放置した虫垂炎はどのような手術方法が選択されますか?

現在は、可能であれば腹腔鏡手術が第一選択となることが多く、1週間放置された虫垂炎であっても、設備と経験のある施設では腹腔鏡手術が試みられます。腹腔鏡手術では、数ヶ所の小さな切開からカメラと器具を入れて虫垂を切除し、腹腔内を洗浄します。

しかし、炎症が強い場合や癒着が広がっている場合、患者さんの全身状態が不安定な場合には、開腹手術が選ばれることもあります。開腹手術では、おなかを大きく開けて視野を確保し、虫垂の切除と汚染された腹水の除去、必要に応じて腸の一部の切除などを行います。

膿瘍を伴う場合は、手術中または手術に先立って膿を排出する処置を併用し、術後もドレーンを留置して残った膿や浸出液を外に流し出すことがあります。どの方法を選ぶかは、画像検査の結果や患者さんの年齢、基礎疾患、全身状態などを総合して決めます。

配信元: Medical DOC

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