なぜ酔うと判断力が低下するのか? 血中アルコール濃度と脳への影響を医師に聞く

なぜ酔うと判断力が低下するのか? 血中アルコール濃度と脳への影響を医師に聞く

飲酒後に現れる変化は「酔い」だけではありません。血中アルコール濃度の上昇に伴い、身体の各所でさまざまな反応が起こります。軽いほろ酔いから泥酔状態まで、段階的に症状は変化していきます。また、アルコールの利尿作用により脱水や電解質バランスの乱れも生じやすくなります。これらの急性反応を正しく理解しておくことは、安全な飲酒を実践するうえで欠かせない知識といえるでしょう。

小坂 真琴

監修医師:
小坂 真琴(医師)

2022年、東京大学医学部卒業
2022年4月~2024年3月、今村総合病院(鹿児島県鹿児島市)で初期研修を修了
2024年4月よりオレンジホームケアクリニック(福井県福井市) 非常勤医師として在宅診療を行いながら、福島県立医科大学放射線健康管理学講座大学院生として研究に従事
2025年10月よりナビタスクリニックに勤務
週1度、相馬中央病院 (福島県相馬市) 非常勤医師として内科外来を担当

アルコールによる急性的な身体反応

アルコールを飲むと「酔う」だけでなく、身体のあちこちでさまざまな変化が起こります。これらは飲んでから数時間のうちに起こる、比較的短期的な反応です。急性症状の多くは、血中アルコール濃度がどれくらい上昇するかによって決まります。これらの急性反応を理解しておくことは、安全な飲酒を心がけるうえで重要です。

血中アルコール濃度と症状の段階

血中アルコール濃度は、血液100mLに対してアルコールが何mL含まれるかを示す数値です。アルコールの量だけでなく、食事の有無、体質、体格などによっても変動します。
一般的な目安として体重約60kgの人は、血中アルコール濃度が0.02%から0.04%程度(ビール中瓶1本から2本相当)では、軽いほろ酔い状態が始まります。気分が少し明るく感じられたり、緊張がやわらいだりする段階です。このくらいの酔いだと自覚症状が乏しいことも多いですが、実際にはすでに集中力や注意力は下がり始めています。
0.05〜0.10%(ビール中瓶2本から4本相当)になると、判断力の低下や動作の鈍さが目立つようになり、自分では問題ないと感じていても、反応が遅れたり、視野が狭くなったりしているため、事故のリスクが大幅に高まります。
0.11〜0.15%では、歩くとふらつく、呂律が回らないといった、明らかな酩酊症状が出現します。この段階になると、記憶力も落ち始め、飲み会の後半をうまく思い出せないということも起こりやすくなります。
さらに血中アルコール濃度が0.16〜0.30%に達すると泥酔状態です。まっすぐ立つのが難しくなり、記憶が飛ぶ(ブラックアウト)が起こりやすくなります。一般的には、血中アルコール濃度が0.30%を超えると昏睡や呼吸抑制が起こり、生命の危険が高まるとされています。ここまでくると医療機関での対応が必要なレベルです。
これらの数値はあくまで目安ですが、「酔って気分が良い」と感じている頃にはすでに脳の機能は確実に低下している、という点を知っておくことが重要です。

脱水と電解質バランスの乱れ

アルコールには利尿作用があり、アルコールを飲んだ日はトイレが近くなる、という経験は多くの人が持っていると思います。これはアルコールが腎臓に働きかけ、抗利尿ホルモンという水分の再吸収に関わるホルモンの働きを抑制するためです。その結果、体は通常よりも多くの水分が尿として排出し、気づかないうちに脱水状態に近づいていきます。脱水が進むと、翌朝に喉がカラカラになる、頭痛がする、体がだるいといった二日酔いの症状が出やすくなります。これらは単にアルコールの影響だけでなく、水分不足によるものも大きいです。
また、アルコールは多くのビタミン(特にビタミンB群)の吸収を妨げ排泄を増やすため、結果としてビタミンB群やマグネシウム、カリウムといった栄養素が不足しがちになります。電解質バランスの乱れは、筋肉のけいれんや疲労感、不整脈のリスクを高める可能性があります。そのため、飲酒中はこまめに水を飲んだり、スポーツドリンクや味噌汁などでミネラルを補うと身体への負担を減らすことができます。食事と一緒に飲むことも、栄養補給や吸収の緩和という点で非常に効果的です。

まとめ

アルコール飲料は適切に利用すれば、生活に彩りを添える嗜好品となりますが、その作用や影響を正しく理解していないと、健康を損なうリスクがあります。本記事で解説したように、アルコールは中枢神経系に作用し、身体的・精神的にさまざまな影響を及ぼします。依存症は誰にでも起こり得る疾患であり、早期発見と適切な対処が重要です。自分の飲酒習慣を定期的に見直し、気になる点があれば早めに医療機関や専門機関に相談することをおすすめします。

参考文献

厚生労働省「アルコール健康障害対策」

国立病院機構 久里浜医療センター「アルコール依存症について」

e-ヘルスネット(厚生労働省)「アルコールの吸収と分解」

国立精神・神経医療研究センター「薬物・アルコール関連障害」

配信元: Medical DOC

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