「努力次第でさまざまな可能性が広がる」 料理人の笠原将弘さんが実感した“料理人の魅力”とは…

「努力次第でさまざまな可能性が広がる」 料理人の笠原将弘さんが実感した“料理人の魅力”とは…

オーブンレンジで“お菓子づくり”に熱中した幼少期



自身の幼少期を“めんどくさい子ども”だったと振り返る笠原さん。

「家が焼き鳥屋をやっていて、小さい頃から店を手伝ったり、カウンターでご飯を食べたりしていて、常連さんに可愛がられて、大人の世界に足を踏み入れて育ってきちゃった。だから、『こういうことを言うと大人は喜ぶんだな』みたいに変に大人びていて…。今思うと嫌な子どもでしたね(笑)」

大人に揉まれて気遣いや気配りができる子どもだったため、友達の家に遊びに行っても長居はしなかったそう。

「『人の家に行って長居をすると嫌われる』と親に言われていたから、友達の家に遊びに行っても僕はすぐに帰っちゃう。『なんだよ笠原、もっと遊ぼうぜ』って言われても『いや、そろそろお暇するわ』って。向こうのお母さんもびっくりですよ。『笠原くん、ココア入れたからちょっと待って!』みたいな。そういう少年でしたよね」

父親がお店で仕込みをしている姿を見て育ったので、子どもの頃から料理には興味を持っていた。

「小学校5年生くらいの頃に、おじいちゃん家から新品のオーブンレンジをもらったんですよ。でも、昔のオーブンレンジはでかいから台所に置き場所がなくて…。苦肉の策で僕の部屋に置かれたんです(笑)。説明書と一緒に大きいレシピブックが付いてきて、丸ごと鶏1羽とかケーキとかいろいろなものが載っている。それを読んでいたら、楽しそうで作りたくなっちゃったんです」

そして、そのオーブンを使って、初めてイチゴのショートケーキを作ってみたが、大失敗をしてしまったという。

「スポンジは膨らまない、硬い、おいしくない。ホイップクリームも泡立てすぎて分離。そのときに悔しくて火がついたというか、このレシピブックに載っているようなケーキを絶対に完成させたいと思って。何回も何回も作っていたら上手に作れるようになって、作ることが楽しくなってきたんです」

そこからそのレシピに載っているさまざまなお菓子を作ることに熱中。出来上がったお菓子を母親やご近所さん、父親のお店のお客さんなどに披露していたそう。

「常連さんの誕生日にケーキを焼いてあげると喜んでくれるんです。『これ、将弘が作ったのか』って言って1万円をくれたりする。それで味を占めて、もう全ての常連さんの誕生日にケーキを焼いてあげていました(笑)」

パティシエになるつもりが板前の修業に行くことに…


高校生になり、将来の進路について考え始めていた笠原さんは、パティシエのワールドカップのドキュメント番組を見て、日本代表チームがフランス大会で活躍している姿に感銘を受けたという。

「日本代表のパティシエの方たちがすごく強くて。フランス代表も『技術がすごい』ってビビっているわけです。その姿を見て、『俺もこれで世界に戦いに行こう』と思っちゃったんです。『俺には部屋のオーブンレンジで培った技術がある』って、完全に勘違いをしてね(笑)」

その後、父親に「パティシエになりたい」「手に職をつけて世界で戦えるようになりたい」と宣言。すると、話は意外な方向へと進んでいくことに…。

「当時はまだパティシエという言葉が一般的ではなくて、うちの親父もよくわかってなかった。だから、『日本料理もいいぞ。板前さんだって手に職がある』って言われて。親父の仕事も見ていたし、親父のことも尊敬して好きだったから、日本料理でも技術をつけることには変わりないなと思って。それで高校を卒業して板前の修行に行ったのが、料理の世界に入ったきっかけです」

調理師学校も行かず、いきなり修行に行こうと考えていた笠原さんは、父親が見つけてきてくれたお店に入ることになる。9年間に渡りそのお店で修行を積んだが、とても厳しい日々を送ったと振り返る。

「まだ昭和の香りが残る時代だったので、気性の荒い人が多かったし、労働時間なんてもうハチャメチャ。朝早く行って、先輩たちが来る前に準備をして、先輩たちが帰った後に片付け。1日18時間くらい働いていた気がしますよ。しかも、何もできないから、掃除とか洗い物とかの下働きばかり。たまに調理的なことをやるとしても、大根をおろすとか野菜の皮を剥くとか、そんな感じでした」

ただ、その下働きの期間にさまざまな経験をして学んだことで、大きく鍛えられた自負はある。

「例えば、すり鉢を使うときは、すり鉢を綺麗にしておいて、滑らないように下に濡れ布巾を敷いておく。そうすると先輩が『これ、誰が用意しといてくれたんだ?』って喜んでくれるので、『あ、自分です』って言って(笑)。そこから『じゃあ笠原、今日はこれをやっていいぞ』と仕事をもらえるようになるわけです」

下積みの経験の中で得たものの中に、「手ぶらで歩くな」と「二度手間禁止」という2つの教訓があるという。

「大の大人が移動するのなら、何か持って行って何か持って帰って来い。そして、そのついでにできることは全て終わらせて来い。これが僕の仕事の哲学だし、修行時代に学んだことです。こういった教訓を10個くらい社訓として厨房に貼ってあります。でもこの前、労務の先生に『この文言はコンプライアンス的にダメですね。剥がしましょうか』って言われちゃいました(笑)」


笠原さんがマスターとして腕をふるう恵比寿「賛否両論」

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