大腸がんは早期発見しやすいがんですが、それでも進行してステージ3や4で発見される事例も少なくありません。
早期なら内視鏡で簡単に治療できたものが、進行に伴って体への影響が大きい外科手術が視野に入ってきます。リンパまで侵されたステージ3で根治は期待できるのか、また余命・生存率も気がかりです。
この記事ではステージ3の大腸がんについて解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「大腸がん・ステージ3」の症状・余命はご存知ですか?【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
大腸がんとは?
かつては欧米人に多く日本では少数だった大腸がんは、食生活の変化とともに近年増加の一途をたどっています。
がん死亡者数でも男女を問わず大腸がんが上位を占めるようになりました。その大腸がんとはどのようなものなのか、概略をみていきます。
結腸・直腸に発生するがん
大腸がんは結腸がん・直腸がんともいわれるように、腹部右下の盲腸から大きく腹部を一周してS字結腸までの結腸と、そこから肛門縁までの直腸にできるがんです。
特に発生しやすい場所としては、S字結腸と直腸周辺が多いとされます。大腸の構造は、内面の粘膜から粘膜下層・固有筋層・漿膜下層・漿膜と続く5層構造になった管状の臓器です。周囲にはリンパ管・血管・腹膜などがあり、大腸がんはまず粘膜から始まります。
良性のポリープががん化するもの・正常な粘膜から直接発生するものがある
大腸がんは粘膜で発生しますが、その多くは粘膜にできるポリープが変化したものです。
大腸ポリープの80%を占める腫瘍性ポリープのうち、良性腺腫ポリープは大きくなる過程でがん化する可能性を持ちます。5mm未満のポリープでがん化するのは1%程度ですが、1cmでは数%、2cm以上でがん化するのは20%〜30%です。
また、少数ですが正常な粘膜から直接大腸がんが発生する事例もあります。表面が平らな平坦型や陥没した陥凹(かんおう)型がありますが、発生のメカニズムなど詳細は未解明です。
大腸がんの余命について
大腸がんは罹患者数が年間約15万人に対し死亡者数が約5万3千人で、生存率が高い=余命が長いがんといえます。
罹患・治療後の余命の目安になるのが5年生存率です。結腸がんと直腸がんについてそれぞれの余命の実状をみていきます。
結腸がんのステージ別の5年生存率
まず結腸がんについて、ステージ別に5年生存率がどう変化するかをみていきましょう。ステージ0〜1の5年生存率は92.1%と高い数値で、ステージ2ではこれが85.7%に低下します。
ステージ3では76.2%と段階的に下がった後、ステージ4では15.8%と急激な低下をみせました。このように進行度に比例して生存率が低下し、特にステージ3から4への進行では数値の変動が顕著です。
直腸がんのステージ別の5年生存率
続いて直腸がんでも、ステージごとに5年生存率の変化をまとめました。
ステージ0〜1での5年生存率は92.7%で、そこからステージ2では85%へ低下します。ステージ3では74.4%だったものがステージ4では急激に落ちて23.1%です。
ただ、ステージ4では結腸がんより7.3ポイント高い数値でした。傾向としては直腸がんも結腸がんと同じような推移を示し、ステージ4で急激に下がります。

