介護ストレスを溜めてしまうことの懸念点や発散方法を解説します

介護ストレスを溜めてしまうことの懸念点や発散方法を解説します

介護を続ける中で、ストレスを感じてしまう、疲れが取れないと悩む方は少なくありません。無理を重ねると、心身の不調や介護うつに発展するおそれもあります。

本記事では介護ストレスについて以下の点を中心に紹介します。

介護ストレスの主な原因と初期症状

ストレスを溜め込むことで起こる問題と注意点

心のケアや発散方法、頼れる支援サービス

介護ストレスについて理解を深め、無理のない介護を続けるための参考にしていただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

小田村 悠希

監修医師:
小田村 悠希(医師)

・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

介護ストレスとは

介護ストレスとは

介護でストレスを感じる原因はどのようなものが考えられますか?

介護によるストレスは、複数の要因が重なって生じるものです。特に在宅で介護を行う場合、心身への負担が大きくなり、疲労や不安を感じやすくなる傾向にあります。

介護者が抱えやすい主なストレスの要因として、次のようなものが挙げられます。

・自身の時間を確保できず、要介護者や家族との関係に悩むといった精神的な負担
・起床介助や入浴介助など、身体にかかる負担が大きい身体的な疲れ
・介護用品やサービス費用の自己負担、収入減少による経済的な不安
・徘徊や暴言など、対応が難しい行動への対応による認知症介護の疲れ

このように、複数の要因が重なることで、介護者自身の健康を損ねることがあります。まずは、自身がどのようなストレスを抱えているかの理解が大切です。

介護ストレスの初期症状にはどのようなものがありますか?

介護ストレスの初期症状は、心身の疲労が蓄積した結果として少しずつ現れるのが特徴です。多くの場合、介護疲れと呼ばれる段階を経て、うつ症状へと移行していきます。
代表的な初期症状には、次のような変化が見られます。

・食欲が落ちて食事量が減る
・夜中に何度も目が覚める、眠りが浅いなどの睡眠障害
・理由のない焦りや不安を感じる
・身体が重く感じる、疲れが取れにくい
・集中力が続かず、物事を考えるのが難しくなる

こうした症状が一時的なものではなく、2週間以上続く場合は注意が必要です。単なる疲労ではなく、心の不調が始まっている可能性があります。早めに周囲へ相談し、心身を休める時間の確保が大切です。

自身が介護ストレスを感じているか確かめる方法はありますか?

介護のストレスは、知らないうちに心身へ蓄積していくため、自身の状態を客観的に確認することが大切です。
在宅介護者向けのストレスチェックやセルフチェックリストも活用し、自身の状態を把握してみましょう。

参照:『介護をがんばりすぎない心の健康チェック』(釧路市ホームページ)

セルフチェックで特に注目したいのは、次のような項目です。

・介護で自身の時間が取れない
・睡眠不足や食欲の低下が続いている
・周囲に理解や協力を得られず孤立を感じる
・介護への不安や苛立ちが強まっている

こうした項目に複数当てはまる場合、介護疲れやストレスが進行している可能性があります。
「疲れているだけ」と軽視せず、早めに家族や専門機関へ相談しましょう。

介護ストレスによる懸念点

介護ストレスによる懸念点

介護ストレスを溜め込むことでどのような問題が起こり得ますか?

介護ストレスを溜め込むと、心身の健康だけでなく家庭内の関係にも悪影響を及ぼすおそれがあります。特に在宅介護が長期化すると、限界まで我慢して問題が表面化することも少なくありません。

その結果、代表的な例として挙げられるのが介護うつです。慢性的な疲労や孤立感が続くと、食欲不振や睡眠障害、強い倦怠感などが現れます。真面目に介護へ向き合う方ほど、自身のつらさを後回しにして無理を重ねやすく、気付かないうちに心の不調を抱えてしまうものです。

さらに、ストレスが募ると要介護者への言葉や態度が荒くなり、虐待に発展するケースもあります。「私は大丈夫」と思い込まず、心身の不調を感じた時点で早めに休息を取り、必要に応じて専門機関へ相談しましょう。

介護ストレスと介護うつの違いはありますか?

介護ストレスと介護うつは密接に関係していますが、同じものではありません。

介護ストレスとは、介護によって生じる精神的、身体的、経済的な負担を指します。長時間の介護や夜間の対応で睡眠不足が続いたり、思うように休息が取れない状況が続いたりすると、心身のバランスが崩れやすくなります。さらに、収入の減少や将来への不安などもストレスの一因です。

一方の介護うつは、そうしたストレスが慢性化して心のエネルギーが枯渇し、うつ状態に至ったものです。うつ状態になると、介護への意欲が低下し、食欲不振や不眠、強い倦怠感、無気力などの症状が見られます。

つまり、介護ストレスは前段階であり、放置すると介護うつへと進行するリスクがあります。

介護うつになりやすい人の特徴を教えてください

介護うつになりやすい方には、いくつかの共通した傾向があります。いずれも、真面目、責任感が強い、といった長所を持ちながら、その頑張りがストレスにつながってしまうケースが見られます。
代表的な特徴には以下のようなものがあります。

・責任感が強く、自身でやらなければと抱え込み、無理をしてでも介護を続けてしまう
・真面目で几帳面で、小さな失敗を許せず自身を責めて落ち込みやすい
・完璧主義で、理想の介護を追い求め思い通りにいかない現実に強いストレスを感じる
・我慢強く、気を使いすぎて悩みを打ち明けられず、ストレスを内に溜め込みやすい
・体力に自信がなく、介助や夜間対応による疲労が蓄積しやすい
・経済的に余裕がなく、費用負担や収入減への不安が精神的な負担となる

これらの傾向に心当たりがある場合は、疲れや不安を放置せず、早めに家族や専門機関に相談して支援を受けることが大切です。

配信元: Medical DOC

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