走行中の列車内で、女子高生にアダルト動画を見せつけたとして、会社員の男性が福岡県迷惑防止条例違反の疑いで県警に逮捕されました。
RKB毎日放送(12月9日配信記事)によると、男性は今年7月15日朝、西鉄貝塚線の列車内で、隣の席の女子高生にスマホでアダルト動画を約5分間見せつけた疑いがもたれています。
男性は「アダルト動画を自分で見ていただけなので、女性に見せつけたわけではない」と容疑を否認しているそうです。
列車内で「アダルト動画を見せつける」行為は、どんな罪に問われうるのでしょうか。刑事事件にくわしい清水俊弁護士に聞きました。
●「卑わいな言動」または「わいせつ物陳列罪」の成立も考えられる
──列車内でスマホでアダルト動画を見る行為は、どのような罪が成立する可能性がありますか。
今回のケースと同じように、各都道府県の「迷惑防止条例違反」(卑わいな行為)にあたる可能性があります。
迷惑防止条例では「公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で」「卑わいな言動をすること」に対して罰則が規定されています。
報道されている被疑事実のように、列車内で隣の席の高校生にアダルト動画を見せつける行為は「卑わいな言動」にあたります。
また、より具体的な行為態様などによっては、法定刑がより重い「わいせつ物陳列罪」(刑法175条、2年以下の拘禁刑もしくは250万円以下の罰金・科料)の成立もあり得ます。
●さすがにこの言い分は通らないだろう
──今回逮捕された男性は「自分で見ていただけなので、女性に見せつけたわけではない」と否認しているといいます。この言い分は認められるのでしょうか。
このような言い分が認められることは難しいと考えます。
裁判例では、「卑わいな言動」に該当するか否かは「もっぱら行為自体やそれを取り巻く客観的・外形的な事情によって判断すべきであり、行為者の意図や目的のような外部からうかがい知ることのできない事情を考慮することは相当でない」とされています。
要するに、行為者の意図は考慮されず、客観的な事情によって判断されるということです。
もし列車内でアダルト動画を視聴していて、客観的にスマホ画面が隣の人にも認識できる状態だった場合、その人の意図はどうであれ、社会通念条、性的道義観念に反する下品でみだらな行為で、羞恥心や不安を覚えさせる行為だと評価されるのではないかと考えられます。
【取材協力弁護士】
清水 俊(しみず・しゅん)弁護士
2010年12月に弁護士登録、以来、民事・家事・刑事・行政など幅広い分野で多くの事件を扱ってきました。「衣食住その基盤の労働を守る弁護士」を目指し、市民にとって身近な法曹であることを心がけています。個人の刑事専門ウェブサイトでも活動しています(https://www.shimizulaw-keijibengo.com/)。
事務所名:横浜合同法律事務所
事務所URL:https://www.yokogo.com/

