
高市総理大臣の発言を巡って日本と中国の関係がぎくしゃくしています。
中国が日本への渡航を自粛するように国民に呼びかけた影響からか、両国を結ぶ飛行機が減便されたり、中国人観光客で賑わっていた京都のホテルの宿泊費用が大幅に値下がりしたりするなど、経済面での影響も出ているようです。
このように、国家間の関係性により大きく影響を受けてしまうという点が外国とのビジネスの大きなデメリットと言えます。これに関わる人たちは今後の両国関係がどのように推移していくか、動向から目が離せない状況でしょう。
当然ですが、人材面などで海外との結びつきが年々強まる介護業界も、こうしたリスクの影響を受けやすくなっています。
中国は、外国人介護人材の供給元としてはそれほど大きなウエイトは占めていません。
例えば、厚生労働省が作成した資料によると、2024年12月末時点で介護の特定技能外国人として来日している中国人の数は1103人で、最も多いインドネシア人の1割以下となっています。
国籍別では6位です。

しかし、
①地理的に近い
②漢字を使う国であり、日本語の習得に時間がかからない
③世界第2位の人口を有しておりマーケットが巨大
などの点は他国に比べて大きなメリットであり、中国人人材を積極的に活用している介護事業者もいます。
また、特定技能としての来日者数は少なくても、日本に留学する人の国籍では中国が全体の36.7%でトップとなっています(2024年5月1日時点・独立行政法人日本学生支援機構調べ)。
介護事業所でアルバイトをする留学生もいることを考えると、相当数の中国人が日本の介護現場に携わっていると思われます。
今後も「日本への渡航自粛」が続けば、当然ながら留学生の来日も減少することが予想されます。
中国人の就労比率が高い介護事業所にとっては少なからず影響が出てくるでしょう。
そして、こうしたリスクは何も中国に限ったことではありません。
今回の日中関係の悪化は、いわゆる台湾有事について総理が踏み込んだ発言をしたことが理由ですが、それ以外にも様々な要因で外国からの人材供給に影響が出る可能性があります。
例えば、介護に限らず日本で就労する外国人ではミャンマーとネパールの人が多く見られます。
しかし、この両国は政治的に不安定であり、現地情勢により人材の供給体制に影響が出ることも考えられます。

こうしたリスクを回避・軽減するには「外国人人材の供給元を特定の国に限定しない」ということがポイントです。
介護事業者が外国人人材を活用するのは、登録支援機関や監理団体からの提案がきっかけのことが多いかと思います。
しかし、1つの登録支援機関等で対応できる国の数にはおのずから限界があります。
介護事業者自身で積極的に登録支援機関等探しから行なっていかないと、結果的に特定の国の外国人だけで固定されてしまい、リスクヘッジができなくなってしまいます。

一方で、複数の国の外国人が就労するとなると、業務マニュアルや研修ツールなどを多数の言語で用意しなくてはいけないなど、介護事業者側の手間や費用負担も増します。
また、外国人同士でのトラブルも考えられます。例えば2025年にはタイとカンボジアとの間で小規模ですが軍事衝突が発生しました。
また、カンボジアとベトナムの両国は歴史的な経緯から関係性があまり良くありません。
日本人はどうしても「同じ東南アジアの国だから似たようなものだろう」と考えてしまい、こうした点に無頓着になりがちです。
複数国の外国人人材を活用する際には、こうしたリスクを考えなくてはなりません。
特定の国に集中するリスクと天秤にかけて、どちらをとるのか決断が求められています。
介護の三ツ星コンシェルジュ


