
監修歯科医師:
木下 裕貴(歯科医師)
北海道大学歯学部卒業。同大学病院にて研修医修了。札幌市内の歯科医院にて副院長・院長を経験。2023年より道内の医療法人の副理事長へ就任。専門はマウスピース矯正だが、一般歯科から歯列矯正・インプラントまで幅広い診療科目に対応できることが強み。『日本床矯正研究会』会員であり小児の矯正にも積極的に取り組んでいる。
毛舌の概要
毛舌(もうぜつ)は舌の表面に毛が生えたように見える一時的な病変です。一般人口の約13%に発生すると言われており、誰にでも起こる可能性があります。一般的に高齢者に多く見られ、女性よりも男性に起こりやすい状態です。(出典:The American Academy of Oral Medicine「毛舌」)
毛舌は主に口腔内の不衛生や、長期間の抗生物質やステロイド剤の使用によって引き起こされます。
舌は約1mmの長さの糸状乳頭(表面のザラザラしている部分)と呼ばれる円錐型の突起に覆われており、毛舌では糸状乳頭に異常が生じます。口腔内の細菌が増殖し、糸状乳頭にケラチンというタンパク質が蓄積されることで、糸状乳頭が異常に長く伸びて発生します。
糸状乳頭は本来、食べ物を舐め取りやすくして、舌の表面の感覚を鋭敏にする役割を持ちます。毛舌が発生しても、多くの場合は無症状で経過し、日常生活に大きな支障をきたすことはありません。しかし、細菌や真菌(カビ)がたまると、ヒリヒリ、チクチクするような痛みが生じる灼熱感(しゃくねつかん)が起こることもあります。
重症化すると、糸状乳頭が髪の毛のように長くなり、黒色や褐色、黄色、赤色、緑色などに変色することもあります。
基本的には歯ブラシや舌ブラシによって口腔内の衛生状況を良好に保つことで改善されますが、病変がなかなか改善しない場合は、薬物療法が必要になることもあります。
毛舌は一度治っても再発する可能性が高いため、予防するためには日々のブラッシングを欠かさずおこない、口腔内の衛生状況を維持することが重要です。舌のブラッシングで吐き気や過敏などの不快感を感じる場合は、状態に適した舌ブラシを選択し、ゆっくりおこなってみましょう。
長期的な予防には、食後や就寝前のブラッシングによって、歯や舌を常に清潔にする習慣をつけることが不可欠です。

毛舌の原因
毛舌は主に口腔内の衛生状況の悪化や、特定の外的要因によって発生します。
食後や就寝前のブラッシングが不十分で口腔内が不衛生になると、毛舌が発生しやすくなります。
抗生物質やステロイド剤の長期服用は、口腔内の常在菌のバランスを崩し、細菌の異常な増殖を引き起こす可能性があります。
喫煙の習慣や頭頸部への放射線治療、大量のコーヒーや紅茶の摂取も毛舌の原因になることがあります。
感染症や糖尿病、腎臓障害、胃腸障害などで免疫が下がることで発生するケースもあります。

