胃下垂の人にみられる食後の症状と対処法

胃下垂には食後にお腹が出る以外にどのような症状がありますか?
胃下垂そのものでは症状が出ないことも多いですが、胃アトニーを伴うとさまざまな消化器症状が現れます。主な症状としては下記のとおりです。
胃部の膨満感や張った感じ
少量の食事で満腹感を感じてしまう
食後に下腹部が膨らむ感じがする
食欲不振や吐き気、げっぷなど消化不良に伴う不快感
これら症状の出方には個人差がありますが、日常生活に支障が出るほど胃の不調が続く場合には対策が必要です。
胃下垂による食後の症状への自分でできる対処法を教えてください
胃下垂が原因と思われる食後の胃もたれや膨満感に対しては、生活習慣の改善が基本です。まず食事のとり方を見直しましょう。具体的には下記のとおりです。
油っぽいものや甘いものは控えめにする
野菜やタンパク質(肉・魚・大豆製品など)をバランスよく取り入れる
少量の食事を回数多くとる
よく噛んでゆっくり食べる
これらの食事のとり方を見直すと同時に、運動習慣も見直しましょう。
腹筋運動など適度な運動を習慣づける
十分な休養とストレス管理を心がける
極端なダイエットを避けて適正体重を維持する
胃下垂そのものを治す薬はありませんが、腹筋や背筋を鍛える適度な運動によって内臓を正しい位置に支える筋肉を強化できます。加えて、ストレスの軽減も大切です。ストレス自体が胃腸の動きを低下させるため、十分な睡眠を取りリラックスできる時間を持つことも症状改善につながります。これらのセルフケアによって多くの場合、胃下垂による不調は緩和できます。
胃下垂で病院に行った方がよい症状を教えてください
胃下垂そのものは緊急性のある疾患ではありませんが、次のような症状がある時は医療機関を受診しましょう。
胃痛や激しい腹部の痛みがある
嘔吐や下痢を伴う
血便・吐血がある
体重減少や貧血
膨満感が徐々に悪化する
以上のような症状がみられたら、単なる胃下垂のせいと放置せず消化器内科など医療機関を受診するとよいでしょう。医師にこれまでの経過や症状を詳しく伝えることで、必要な検査を行い、原因疾患の有無を評価してもらえます。
病院では胃下垂の食後の症状に対してどのような治療を行いますか?
胃下垂自体は体質的なものなので、胃をもとの位置に戻す治療薬はありません。医療機関ではまず胃潰瘍など、ほかの病気が隠れていないか検査で確認したうえで、症状に応じた対症療法が行われます。
基本は先述の生活習慣の改善指導ですが、症状が強い場合には薬物療法も検討されます。胃アトニーなどで胃の動きが低下している場合には胃腸機能調整薬や消化酵素薬などが用いられ、消化を助けます。胃酸過多が疑われる場合には、胃酸の分泌を抑える薬が使われることもあります。
編集部まとめ

胃下垂そのものは病気ではないため、症状がなければ経過を観察するだけで問題ありません。しかし「少し食べただけですぐお腹が苦しくなる」「食後に下腹部がぽっこり出て恥ずかしい」といった不調がある場合、胃下垂による胃機能低下が起きている可能性があります。まずは食生活の改善や運動など、自分でできる対処を実践してみましょう。
そして、食後のお腹が気になる方は医療機関を受診し、正確な診断を受けるとよいでしょう。適切な指導や必要な薬物療法によって症状は和らぎ、日常生活の質も向上します。早めの対応と生活習慣の工夫で、胃下垂による不調を軽減し健やかな毎日を過ごしましょう。
参考文献
『胃下垂(いかすい)』(恩賜財団済生会)

