現代社会において、ストレスは多くの方が抱える問題であり、不整脈の発生や悪化に深く関わる重要な要因となっています。ストレスを感じると交感神経が活性化され、心臓のリズムに影響を及ぼすことが知られているのです。また、ストレス下での生活習慣の変化も、不整脈のリスクを高める要因となります。ここでは、ストレスが不整脈を引き起こすメカニズムと、その影響について詳しく見ていきます。

監修医師:
小坂 真琴(医師)
2022年4月~2024年3月、今村総合病院(鹿児島県鹿児島市)で初期研修を修了
2024年4月よりオレンジホームケアクリニック(福井県福井市) 非常勤医師として在宅診療を行いながら、福島県立医科大学放射線健康管理学講座大学院生として研究に従事
2025年10月よりナビタスクリニックに勤務
週1度、相馬中央病院 (福島県相馬市) 非常勤医師として内科外来を担当
ストレスと不整脈の深い関係
現代社会において、ストレスは不整脈の発生や悪化に深く関わる重要な要因となっています。交感神経の活性化や生活習慣の変化を通じて、心臓のリズムに影響を及ぼします。
ストレスが不整脈を引き起こすメカニズム
ストレスを感じると、身体は「闘争・逃走反応」と呼ばれる生理的反応を起こします。この際、交感神経が活性化し、アドレナリンやノルアドレナリンといったホルモンが分泌されるのです。これらのホルモンは心拍数を増加させ、血圧を上昇させるため、心臓への負担が高まります。
交感神経の過剰な刺激は、心臓の電気的な興奮性を高め、期外収縮や頻脈性不整脈を誘発しやすくします。仕事のプレゼンテーション前や重要な面接の際に動悸を感じた経験がある方も多いでしょう。これは一時的なものであれば心配は少ないですが、慢性的にストレスにさらされると、不整脈が持続的に発生するリスクが高まるのです。
また、ストレス状態では自律神経のバランスが乱れやすくなります。交感神経と副交感神経の調和が崩れることで、心拍のリズムが不安定となり、さまざまなタイプの不整脈が出現しやすくなるのです。
ストレスによる生活習慣の変化と影響
ストレスは直接的に不整脈を引き起こすだけでなく、生活習慣を通じて間接的にも影響を及ぼします。ストレスを抱えた状態では、飲酒量が増加する傾向があるでしょう。アルコールは一時的に気分を和らげる効果がありますが、心房細動などの不整脈のリスクを高めることが明らかになっています。
喫煙もストレス解消の手段として用いられることがありますが、ニコチンは交感神経を刺激し、心拍数を増加させるため、不整脈を悪化させる要因となります。カフェインの過剰摂取も注意が必要です。
食生活の乱れもストレス時に起こりやすい変化といえます。不規則な食事や暴飲暴食は体重増加や高血圧、糖尿病といった生活習慣病のリスクを高め、結果的に不整脈の発生につながるでしょう。運動不足も見逃せない要因です。ストレスにより活動意欲が低下し、運動習慣が失われると、心肺機能が低下し、不整脈のリスクが上昇します。
まとめ
不整脈は誰にでも起こり得る症状ですが、その中には生命に関わる危険なものも含まれます。動悸や胸の違和感、めまいといった症状を感じた際には、自己判断せずに医療機関を受診することが重要です。特に失神や強い胸痛を伴う場合には、速やかな受診が求められるでしょう。
不整脈の原因は心臓の疾患だけでなく、ストレスや生活習慣、加齢など多岐にわたるため、総合的な評価が必要となります。適切な診断と治療により、多くの不整脈は良好にコントロールでき、突然死のリスクも大幅に軽減できるのです。気になる症状がある方は、循環器内科の専門医にご相談ください。
参考文献
国立循環器病研究センター「不整脈」

