オトナミューズ創刊から10年の間に“生活の場を海外に移す”という大きな変化があった吉川ひなのさん。海外生活を始める前と、その後の心境の変化などについてのインタビューをさせていただきました。示唆に富むエピソードの数々、お楽しみください。
吉川ひなの in HAWAII
「これまでの10年は、ハワイでもう一回生き直すというか、本来の自分を取り戻す時間だったと思う」
このビーチと空最高なの♡
ハワイの自然、暮らす人たちが、仕事以外の人生を教えてくれた
たまにはおめかしして撮影も
― 第1子の妊娠中にハワイで過ごしたことが、移住のきっかけになったと聞きました。
「元々ハワイは留学先のひとつで、夫と入籍するまでの1年間に、ハワイをはじめとして英語圏のいくつかの国へ留学して、自分のためだけに生きる時間を過ごそうと決めていたんですね。ところが準備が全て整ったタイミングで妊娠が発覚して、留学は一旦取りやめることに。でも、留学というかたちではなくなるけど、やっぱり行きたいと思って、最初に行くと決めていたハワイで妊娠期間を過ごしたんです。夫は日本とハワイを行ったり来たりで、私はお腹の赤ちゃんと過ごす日々。早寝早起きをして、朝ゴハンを食べて、近所をお散歩する……。13歳から30歳くらいまで、仕事ばかりしてきた人生だったので、仕事以外の時間は全て次の仕事までの“待機”だったんですよね。そんなふうに生きてきたから、ハワイでの何でもない毎日が衝撃的だったんです。私のことなんて誰も知らず、知らなくてもすれ違いざまに笑顔を交わすこと、空がこんなに広くてきれいなこと、こんな素晴らしい生活が世に存在するなんて聞いてない! って、びっくりしちゃって」
潜っても気持ちいい♡
― 「この暮らしを続けたい」とひなのさんは熱望することになるわけですが、周囲の反応はどういった様子でしたか?
「まず夫ですが、彼は生粋の都会っ子というのもあり、ハワイはたまに行くから楽しいのであって、住む場所ではないという感覚の人でした。長女が2歳になるまで日本とハワイを行き来する生活を続け、プリスクールに入学するタイミングの2015年にハワイに移住。夫曰く、『君がハワイがいいって言うから、僕もハワイにいるだけだよ』と。彼は同じアメリカでもメインランドに住みたいと言い続けていたんですね」
― その後、2人目を出産した2018年からの1年間、ハワイを離れてLAが拠点に。
「ハワイの家は残した状態で引っ越したけれど、夫は『LAいいね!』ととても楽しんでいて。私にとっても、出会う人たちが面白い人ばかりだし、生き方にしても人生を豊かにしよう、もっと楽しもうとする姿にたくさん刺激をもらえる場所でした。このままハワイに帰らないという選択もあったけれど、ちょうどLAで山火事が相次いだ年で街中まで煙で真っ白。長女にアレルギーが出てしまって、肌がかゆくて、ぐちゅぐちゅになってしまった状態が何カ月も続いたんです。ところが夏休みにハワイに帰ってみると、数カ月治らなかった肌がたった1週間で治っちゃって。LAは刺激があるという意味では楽しいけれど、家族で子どもを育てていくことを考えると、やっぱりハワイだねという結論に。夫も一度ハワイを離れたことがきっかけで、ハワイの魅力を改めて実感したようでした」
― 一方で、海外移住をすることで、今までと同じように働けなくなることについては?
「東京で暮らしていた当時は、仕事メインで生きていたから楽しさや幸せを感じられず、いつも何か恐怖を感じながらの生活。だから、仕事が思うようにできないとか、海外で生活していけるのかっていう、先行きの不安や怖さよりも、現状から解放されるキラキラしたものしか見えてなかったんです。ただ、周囲のほぼ全ての人からは、『うまくいくわけがない』って言われました。ハワイに住みながら日本の仕事を続けるなんて都合のいい話があるわけないよ、と。でも、なんの根拠もなくて不思議なんだけど、私は絶対にできると心が揺らがなかった。それは、もし最悪みんなの言う通りになったとしてもいいやと思えたから。全責任を自分で取って、失敗したらそのときにまた考えればいい。とにかく大丈夫だから放っておいてって」
― 誰かに背中を押されたわけでもなく?
「そう、背中を押してくれた人はいなかった。むしろ、みんな私の腕を引っ張って引き留めようとしたくらい(笑)。私は自分のやりたいことに、ちゃんと自分の気持ちがある人がすごく好き。けれど、世の中を見ると、うまくいかなかった人に対して意地悪を言う人がすごく多いでしょ? 私からすればナイストライでしかない。そら見ろ、できなかったじゃんと言われようが、自分で自分にナイストライ! と褒めてあげて、労うことができたなら、それでいいって思うんです。そもそも私は自己肯定感がめっちゃ低いけれど、自分の中に芽生えたやりたいっていう欲求はおさえられないから、自分を奮い立たせて、なんとしてでもやり遂げようと立ち向かってきた。その積み重ねがあって、今は自分にちょっとずつだけど自信がついたし、自己肯定感も少しずつ育まれている気がします」

