胃がんの手術はどのような手術方法が存在し、それぞれにどのような特徴があるのでしょうか?
本記事では胃がんの手術について以下の点を中心にご紹介します。
胃がんの手術について
胃がん切除方法
胃がん手術の主な合併症
胃がんの手術について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
胃がんの手術について
胃がんの手術は、がんを除去することによる根治が目的です。手術では、がんの大きさや位置、深達度を考慮して、胃の一部または全部を切除します。
早期胃がんの場合は、できるだけ胃の機能を温存するために切除範囲を小さくしますが、がんが取り残されないよう十分な余裕を持って切除します。
また、がんが周囲のリンパ節に転移している可能性があるため、胃周囲のリンパ節も脂肪組織ごと郭清(切除)します。この際、リンパ節郭清の範囲は、がんの進行度によって決められています。
胃とリンパ節の切除後は、食事が摂れるように残った消化管をつなぎ合わせる再建術を行います。
再建方法は、胃の切除範囲や患者さんの状態に応じて選択されます。
胃がん切除方法
以下では、胃がん切除方法を4つ紹介します。
胃全摘術
胃全摘術は、胃上部に及ぶ進行胃がんや、胃上部の早期胃がんで幽門側の胃を半分以上残すことが難しい場合に選択されることがある手術方法です。
胃全摘術では、胃の入口である噴門と出口である幽門を含めた胃全体を切除します。
胃を全摘した後には、再建法が行われます。再建方法にはRoux-en-Y法があります。
Roux-en-Y法では、食道と空腸(小腸の上部)を吻合(つなぎ合わせる)し、さらに空腸同士を吻合して食物が通過できるようにします。
また、十二指腸から分泌される消化液(膵液・胆汁)と食物が混ざるように、空腸同士も吻合します。
逆流性食道炎を防ぐため、空腸と食道を40cm以上離すことが重要です。
近年は、術後のQOL(生活の質)を考慮し、可能な限り胃を残すことが重視されています。胃を残すことで、術後の急激な体重減少を軽減できるからです。
しかし、がんの根治性を損なわないように、十分な切除範囲の確保が大切です。
幽門側(ゆうもんそく)胃切除術
幽門側胃切除術は、がんを取り除きつつ、胃の機能を可能な限り温存することを目的とした術式です。
幽門側胃切除術は、胃の出口である幽門を含めて、胃の下部(幽門側)を3分の2から5分の4程度切除します。
胃の上部にかからない進行胃がんで、胃の中部から下部に腫瘍がある場合にに対して行われます。
幽門側胃切除術では、残った胃(噴門側)と十二指腸または小腸をつなぎ合わせる再建術が行われます。再建方法には主に3つの方法があります。
1つ目は、ビルロートI法と呼ばれる方法で、残った胃と十二指腸を直接つなぎ合わせます。
2つ目は、ビルロートⅡ法と呼ばれる方法で、十二指腸の断端は縫い閉じてしまって空腸の近い部分にスリットを開け、そこに残った胃をつなぎ合わせる方法です。
3つ目は、Roux-en-Y法と呼ばれる方法で、残った胃と空腸(小腸の上部)をつなぎ合わせます。
Roux-en-Y法では、十二指腸から分泌される消化液(膵液・胆汁)と食物が混ざるように、空腸同士も吻合します。
幽門(ゆうもん)保存胃切除術
幽門保存胃切除術は、胃の中部に限局した小さな早期胃がんで、腫瘍が幽門輪から4cm以上離れている場合に、選択されることがある術式です。
幽門保存胃切除術では、胃の出口である幽門を温存し、胃の中部を切除します。
胃の機能を可能な限り温存しつつ、がんを取り除くことを目的とした術式です。
切除後の再建方法は、残った胃の上部(噴門側)と下部(幽門側)をつなぎ合わせます。幽門を温存することで、食物が急激に腸に流れ込むことを防ぎ、胃の機能を一部保てます。
幽門保存胃切除術は、術後のダンピング症候群や貧血、体重減少が起こりにくいというメリットがあります。
しかし、胃もたれや逆流症状が起こる可能性があり、また残胃に新たながんが発生するリスクもあるため、定期的な内視鏡検査による経過観察が重要です。
噴門側(ふんもんそく)胃切除
噴門側胃切除は、胃の上部(噴門側)に限局した早期胃がんや、食道胃接合部がんの一部に対して行われることがある機能温存手術です。
噴門側胃切除では、噴門を含めて胃の上部を3分の1から2分の1程度を切除し、残りの2分の1から3分の2の胃を温存します。
噴門側胃切除後の再建方法には、主に2つの方法があります。1つ目は、食道と残胃を直接つなぎ合わせる食道残胃吻合法です。
この方法では、逆流防止機構を付加するために、胃壁で食道と残胃の吻合部を覆います。胃内容物の食道への逆流を防ぎます。
2つ目は、ダブルトラクト法と呼ばれる方法です。この方法では、食道と空腸(小腸の上部)、残胃と空腸、空腸同士をつなぎ合わせます。
食物が2つの経路(食道→空腸、食道→空腸→残胃)を通るため、残胃の機能を生かせます。

