裏切られたことへの虚無感
勝昭は、顔を覆って泣き崩れた。彼の言っていることは、あまりにも身勝手で、情けなくて腹立たしい。
「なんて自分勝手なの?私は律を生んで、毎日のお世話でいっぱいいっぱいだよ。そんな今、こんなこと言ってくるなんてひどすぎる」
私は感情的に怒鳴ることもできず、ただ無気力になった。怒りよりも、悲しみが、そして裏切られたことへの空虚感が全身を支配する。
「勝昭のことを愛してたし、律と家族になれることがうれしかった。でも、あなたは裏切ってたんだね、愛なんてなかったんだね」
「違うよ千佳子、君への気持ちは嘘じゃない。本当に愛してる。だから相手がバラす前に、自分で言って謝りたかったんだ…」
愛してる、という勝昭の言葉。その言葉の重さは、私にはもう分からなかった。ただ、頭では理解できないほど彼を軽蔑しているのに、心の底では彼を失うことを想像できない自分がいる。このぐちゃぐちゃな感情を、どう整理すればいいのだろうか―――。
あとがき:贖罪の優しさと、愛の行方
勝昭が律の誕生を心から喜んでいたこと、そして、律が生まれてからの献身的な優しさが、「贖罪」の行為だったかもしれないという示唆は、読者の心をさらにざわつかせます。裏切りを知ってもなお、勝昭を失うことを想像できない千佳子の心情は、愛憎入り混じる複雑な女性の現実を表しています。
不倫相手からの脅しという現実的な問題も加わり、物語は個人的な感情論だけでなく、夫婦の法的な危機へと展開していきます。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ゆずプー
(配信元: ママリ)

