前歯の真ん中のへこみに対する治療方法
次に、前歯の真ん中のへこみを治療する方法について解説します。前歯の真ん中のへこみは、その原因によって適した治療方法が変わります。
詰め物や被せ物で補修する
前歯の真ん中のへこみは、詰め物や被せ物で修復できる場合があります。具体的には、以下に挙げる3つの方法が選択肢として用意されています。
◎ダイレクトボンディングダイレクトボンディングとは、歯の表面にコンポジットレジンを盛り付けて成形し、光で固める方法です。前歯の真ん中のちょっとしたへこみや欠けを簡易的に修正できます。歯を削る量もわずかで、その他の治療法と比較すると費用もやや安くなっています。ただし、歯科医師の関する技術や知識、経験によって、ダイレクトボンディングによる仕上がりが大きく変わる点に注意しなければなりません。技術や経験の浅い歯科医師が治療を担当したら、満足のいく仕上がりが得られないこともあります。
・保険診療のコンポジット修復について
ダイレクトボンディングは、レジンとセラミックの混合材料で歯を修復します。適応症も幅広く、審美性を追求することが可能です。一方、保険診療のコンポジットレジン修復は、審美目的で行うことはできません。使用する素材も完全なプラスチックであり、経年的な劣化が起こりやすいです。この点も理解したうえで、自分に合った治療法を選ぶことが大切です。
◎ラミネートベニア
ラミネートベニアとは、歯の表面にセラミック製のチップを貼り付ける治療法です。軽度であれば、翼状捻転やすきっ歯、歯周病による歯根面の露出も改善できます。また、ラミネートベニアはエナメル質を一層削るだけで装着できる装置なので、ダイレクトボンディングと同じく侵襲が低い治療法といえます。
◎セラミック治療
セラミック製の詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)を使って、前歯の真ん中のへこみを改善します。歯を削る量は多くなり、費用もやや高くなりますが、重症度が高いケースにも適応できます。
歯列矯正などで噛み合わせを調整する
翼状捻転をはじめとした不正咬合によって、前歯の真ん中にへこみが生じる場合は、歯列矯正が適しています。マウスピース型矯正装置やマルチブラケット装置などで歯を動かす治療法で、悪い歯並び・噛み合わせを根本から改善できます。歯列矯正なら歯を削る必要もありません。その一方で、数十万から百万円程度の費用がかかる、治療期間が長い、治療に痛みを伴うなどのデメリットも伴います。
前歯の真ん中のへこみを治すのにかかる治療期間
このように、前歯の真ん中のへこみは、いろいろな方法で治療することができますが、それぞれどのくらいの期間で治療が終わるのかも気になるところです。
クラウンやラミネートベニアの場合
◎ラミネートベニアの治療期間
ラミネートベニアは、歯の表側のエナメル質を0.5mmくらい削り、歯型を取ってセラミック製のチップを装着します。一般的な症例では、2~3回の通院、つまり2~3週間で治療が完了します。
◎クラウンの治療期間
クラウンを装着する場合は、歯を広範囲に切削する必要があります。元々の歯質が少ないケースでは、歯の神経を抜いた後に根本治療を行わなければなりません。そんなクラウンによる治療の期間は、短ければ2~3週間程度、根本治療を伴う場合では、1〜2ヵ月程度かかります。
歯列矯正の場合
前歯の真ん中のへこみを歯列矯正で治す場合は、歯を動かす動的治療に1〜3年程度、歯の後戻りを防止する保定処置に1〜3年程度かかります。部分矯正で治療する場合は、歯の移動に要する期間が3〜12ヵ月程度に短縮されます。
その他、軽度なへこみの場合
◎ダイレクトボンディングの治療期間
前歯の軽度なへこみは、ダイレクトボンディングで対応できることがほとんどです。ダイレクトボンディングは、歯を削ってコンポジットレジンを盛り付け、光で固める処置を数十分で完了できます。その後に不具合などが生じなければ、ダイレクトボンディングによる治療は1日で終わります。

