心不全を発症すると咳が出る原因
心不全による咳は、日常生活で経験することの多い、風邪をはじめとする感染症による咳とは原因が異なります。主な原因を3つあげて解説いたします。
肺うっ血による気道刺激
心不全では、心臓のポンプ機能が低下するため、心臓に溜まった血液は送り出せなくなります。その結果、送り出せなかった血液が肺に溜まりやすくなります。この状態が「肺うっ血」です。肺うっ血になると、肺の血管から水分が染み出しやすくなるため、肺の中が水っぽい状態になります。そのため、気道が常に刺激された状態のため、軽い刺激でも咳が起こりやすくなります。
左心系の機能低下による肺内圧の上昇
左心系とは、心臓の左心房と左心室をさします。左心不全を起こすと、肺から左心房に戻る血液が滞るようになり、肺の血管内圧が高まります。そのため、血管からしみ出た水分が肺の組織に広がり、肺が拡張しづらくなる事が多いです。その結果、肺が固くなった状態となり、気道内のわずかな刺激でも気道が反応しやすくなり、咳を誘発する要因になります。
肺水腫
心不全が進行すると、肺に溜まった水分がさらに増えて「肺水腫」になり、肺の内部が液体で満たされた状態になります。この液体が気管に流れ込むことで、泡状の痰が生じ、咳が止まりにくくなります。ピンク色の痰が出ることも少なくありません。
心不全の前兆となる初期症状
心不全の前兆となる段階では、心臓の働きは弱まり始めていますが、臓器へ送られる血液量はまだ大きく低下していません。そのため、日常生活では気づきにくい軽い変化として現れ、年齢や体調のせいと受け取られることも少なくありません。こうした小さな変化に早めに気づき、適切な対処法を知ったうえで医療機関を受診することが大切です。代表的な症状を3つあげて解説いたします。
労作時の息切れ
心臓のポンプ機能が弱くなると、体を動かすために必要な酸素を十分に送り届けられなくなります。そのため、軽い動作でも呼吸が苦しくなりやすくなります。初期の段階では、階段を上がる、早歩きするといった身近な動作で息切れを感じることが多く、休むと回復することが多いです。見逃されやすい症状なので注意してください。
足首・下肢のむくみ
心臓の働きが低下すると、血液がうまく戻れず、足首やすねに余分な水分がたまりやすくなります。朝はむくみが目立たなくても、夕方になると靴下の跡が目立ったり、足が重く感じたりします。初期段階では休むと改善しますが、進行するとむくみが続き、体重が増えることが多いです。心不全に気づく重要なサインです。
横になると息苦しい
心臓のポンプ機能が低下すると、肺から心臓に戻る血液が滞り、肺の血管に圧力がかかりやすくなります。その結果、水分が肺にしみ出し始め、肺水腫の初期状態が生じます。横になると血液が心臓に戻りやすくなるため、この状態が悪化し、息苦しさを感じます。体を起こす、枕を高くするなどの体位で呼吸が楽になるのが特徴です。

