「もう自分の土地が分からない」「0円でいいのに……」 売れない分譲地“0円物件” 手放せない背景、拡大する有償引取サービスなどの実態に迫る

「もう自分の土地が分からない」「0円でいいのに……」 売れない分譲地“0円物件” 手放せない背景、拡大する有償引取サービスなどの実態に迫る

 「0円物件」という言葉を目にしたことがある方は多いと思う。主に人口減や過疎化が進んでいる小都市や農村の、もはや安すぎて値段もつけられない不動産物件を、0円で引き取り手を募集するというものだ。

 0円物件を専門に扱うサイトはいくつかあり、物件の種類は土地であったり空き家であったり山林であったりさまざまだが、特に建物の場合、いくら田舎の古家とは言え「住宅」が0円というインパクトは強く、メディアでもしばしば取り上げられる。

 10万円、20万円という価格ではなかなか問い合わせが来ないような底値の物件でも、不思議なことに0円物件で登場すると複数の応募申し込みがあって、すぐに引き取り手が決まったりする。多くの方が想像する通り、その中にはもちろん「安物買いの何とか」と言わざるを得ない事例も多々あるとは思うが、それはいいとして、なぜ0円になると途端にレスポンスが跳ね上がるのか。

ライター:吉川祐介

2017年、八街市周辺の物件探しの過程で数多く目にした、高度成長期以降の投機型分譲地についてのブログ「URBANSPRAWL -限界ニュータウン探訪記-」を開設。その後、YouTubeチャンネルの解説と自著の出版を経て同テーマに関する発信を生業にしています。

X:@yuwave2009

YouTube:@urbansprawl-zero

上限規制改正でも売れない「0円物件」の特殊な流通実態

 2024年7月より仲介手数料の上限規制が改正され、現在はどんなに安値の物件であっても、仲介業者は買主から最大で税込33万円の仲介手数料を貰うことができる。

 改正前は、買主からは物件価格の5%の手数料しか徴収することができず、つまり10万円の物件を扱っても、買主からもらえる手数料はわずか5000円が上限だった。これが、仲介業者が低価格の物件を忌避し、その流通を妨げる一因であると考えられていた。

 こうした状況を是正するための上限規制改正だったのだが、今まで10万円でも売れなかった物件に33万円もの手数料が上乗せされようものなら、流通を促すどころか余計に売れなくなるのは自明の理である。そのため今では、一般の仲介物件と0円物件の棲み分けがより明確になり、いわゆる「負動産」は、従来の不動産仲介によらない独自の流通形態が発展している。

 現在、0円物件専門サイトとして最も取引が活発で、かつメディアの露出も多いサイトのひとつである「みんなの0円物件」が開設されたのが2019年。それから6年が経過し、「どうやっても売れない不動産がある」という認識は、年々広まっているのではという感覚がある。

 僕が調査対象にしている「限界ニュータウン」は、元々地価の値上がりを期待して買われた「投資商品」としての性格が強かったため、今も売らずに持ち続けている人に対して「最初に買った時の値段が忘れられなくて損切りできない」というイメージは未だに根強い。

配信元: ねとらぼ

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