不整脈の適切な治療を行うためには、まず正確な診断が不可欠となります。心電図検査を基本として、心臓超音波検査や電気生理学的検査など、さまざまな検査方法が用いられるのです。不整脈のタイプや重症度、背景にある心疾患の有無を詳しく調べることで、個々の患者さんに適した治療方針を決定できます。ここでは、不整脈診断のための基本的な検査から詳細な評価方法まで解説します。

監修医師:
小坂 真琴(医師)
2022年4月~2024年3月、今村総合病院(鹿児島県鹿児島市)で初期研修を修了
2024年4月よりオレンジホームケアクリニック(福井県福井市) 非常勤医師として在宅診療を行いながら、福島県立医科大学放射線健康管理学講座大学院生として研究に従事
2025年10月よりナビタスクリニックに勤務
週1度、相馬中央病院 (福島県相馬市) 非常勤医師として内科外来を担当
不整脈の診断と検査方法
不整脈の適切な治療のためには、まず正確な診断が必要となります。心電図検査を中心に、心臓超音波検査や電気生理学的検査など、さまざまな検査が実施されます。
基本的な検査と心電図検査
不整脈の診断において、もっとも基本となるのが心電図検査です。胸部や四肢に電極を装着し、心臓の電気的な活動を記録します。検査時間は数分程度で、痛みや不快感はありません。安静時の心電図では、その瞬間の心臓のリズムや波形の異常を確認できるでしょう。
しかし、不整脈は常に起こっているわけではなく、間欠的に出現することも多いため、外来での短時間の心電図検査だけでは捉えられないことがあります。そのため、症状が頻繁に起こる場合や診断が確定しない場合には、ホルター心電図検査が行われるのです。
ホルター心電図は、小型の記録装置を身につけて24時間連続で心電図を記録する検査です。日常生活を送りながら測定できるため、睡眠中や活動中の不整脈を捉えることが可能となります。記録期間中は、症状が出た時刻や活動内容を日誌に記録し、心電図データと照合することで、症状と不整脈の関連を明らかにできるでしょう。
詳細な評価のための追加検査
不整脈の原因や重症度を評価するため、心電図以外の検査が行われることもあります。心臓超音波検査(心エコー検査)は、超音波を用いて心臓の構造や動きをリアルタイムで観察する検査です。心臓弁膜症や心筋症、心不全の有無を確認でき、不整脈の背景にある心疾患の診断に役立つでしょう。
運動負荷心電図検査は、トレッドミルや自転車エルゴメーターを用いて運動中の心電図変化を観察する検査です。運動時に誘発される不整脈や虚血性心疾患の診断に有用とされています。血液検査では、甲状腺機能や電解質(カリウム、マグネシウムなど)の異常、心筋マーカーなどを測定し、不整脈の原因となる全身性疾患の有無を確認します。
胸部X線検査は心臓の大きさや肺の状態を評価し、心不全の合併を確認するために行われるのです。より詳細な評価が必要な場合には、電気生理学的検査(EPS)が実施されることがあります。これはカテーテルを心臓内に挿入し、心臓の電気的な活動を直接測定する検査で、不整脈の発生部位や機序を詳しく調べることができるでしょう。主に治療方針の決定や、カテーテルアブレーション治療の際に行われます。
まとめ
不整脈は誰にでも起こり得る症状ですが、その中には生命に関わる危険なものも含まれます。動悸や胸の違和感、めまいといった症状を感じた際には、自己判断せずに医療機関を受診することが重要です。特に失神や強い胸痛を伴う場合には、速やかな受診が求められるでしょう。
不整脈の原因は心臓の疾患だけでなく、ストレスや生活習慣、加齢など多岐にわたるため、総合的な評価が必要となります。適切な診断と治療により、多くの不整脈は良好にコントロールでき、突然死のリスクも大幅に軽減できるのです。気になる症状がある方は、循環器内科の専門医にご相談ください。
参考文献
国立循環器病研究センター「不整脈」

