「“自分が作りたい料理”を作ってほしい」 料理家の今井真実さんが訴える“料理をする人”への想い

「“自分が作りたい料理”を作ってほしい」 料理家の今井真実さんが訴える“料理をする人”への想い

日々の料理は“コスプレ気分”で楽しむ


お子さんが小学校に入った際、「お母さん、給食のカレーって本当においしい」と言われてショックを受けたことがあるという。

「たしかに、私もいろいろなカレーを作ってきたつもりやったけど、給食のカレー的なものは作ってこなかったなって…。そういうものも作ってあげることも大切なんですよ。自分だけが楽しいではなく、今日は子どもが大変でしんどそうだなという日は、子どもが楽しめるものと作ってあげる。毎日いろいろな日を作るといいかなと思います」

そういった日々の“コスプレ気分”を楽しんでいると今井さんは胸を張る。

「今日は魚料理がおいしい居酒屋の女将とか、今日はファミレスの厨房とか、コスプレ気分です。家族のことを考えながら、そんな自分が好きみたいな感じですね。みんなが笑顔で、あなたも大切、私も大切という考え方です」

この考え方は、レシピという形に落とすときにもとても意識しているそう。

「作ってみて、自分はおいしかったけど、子どもにはウケが悪かったとなると、それはもう作ってもらえないんですよ。だから、レシピ化する料理は、大人にも子どもにもウケがいいものを基本的には選んでいますね」

「どこからが料理か?」というのは、しばしば問題提起されるものでもあるが、例えば、もずく酢のパックを開けて器に移した時点で立派な料理の一品だと今井さんは言う。

「やり遂げたというハードルを低くすれば充足感にもつながります。私はやったというのが日々感じられるので、そこは自分で認めてあげたほうがいいと思います。『これって料理と認めてもらえないかも』と思ったりもする。でも、家族がどう捉えるかではなく、『これでいい』『これがいい』と自分の意識を変えていくところが大切じゃないかと思いますね」

“食べたいから作る”というのが料理の原点


毎日のようにnoteに日記を書いている今井さん。レシピ作りと文字を書く作業には似ている部分もあると感じているそう。


今井真実さんのnote。「料理と毎日」というタイトルで日々日記を綴る。

「料理家の方は文章を書こうと思えば書けるのではないかと思っています。レシピはすごく短い文章で人を動かして、料理をするところまでさせないといけない。本当に書こうと思ったら長文で書きたくなるけど、みなさん要約してレシピにしているので、自然にそういった文章力が身についていると思うんです」

料理を作ることと料理を食べること。どちらが好きかと問われると、今井さんは「正直言うと食べることですね」と答える。

「“食べたいから作る”というのが私の料理の原点なんです。noteに最初に書いたレシピが『ベーコンとカルボナーラ』のレシピなんですけど、おいしいカルボナーラが食べたいから、料理を自分でし始めた。で、カルボナーラに合うベーコンがほしいから、ベーコンも自分で作り始めた。これを食べたいからという原点や目標があるから料理をするんです」

“食べたい”が、一番の料理の原動力。

「食べるのが好きだからこそ、“おいしい”も追求したくなる。自分の舌の感じ方をグレードアップしていこうという思いにもなりますね」

(TEXT:山田周平)

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【ゲスト】

第53回・第54回(11月21日・28日配信) 今井真実さん


料理家・オージービーフPRアンバサダー日本代表/兵庫県神戸市出身、東京都在住。レシピやエッセイ、SNSでの発信が幅広い層の支持を集め、雑誌、web、企業広告など多様な媒体で活躍。身近な食材を使いながら、香りや発酵、異国のニュアンスをさりげなく重ねる料理が特徴で、「知っているのに知らない味」「料理が楽しくなり、何度も作りたくなる」と高い評価を得ている。2023年、オージービーフPRアンバサダー日本代表に選出され、国内外でのレシピ開発やブランド発信、海外シェフとのコラボレーションなど、海外でも活動の幅を広げている。著書に『

毎日のあたらしい料理 いつもの食材に「驚き」をひとさじ』(KADOKAWA)ほか多数。近刊に山田詠美氏との共著『Amy's Kitchen』(左右社)などがある。

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【パーソナリティ】 

クックパッド株式会社 小竹 貴子


クックパッド社員/初代編集長/料理愛好家。
趣味は料理🍳仕事も料理。著書『ちょっとの丸暗記で外食レベルのごはんになる』『時間があっても、ごはん作りはしんどい』(日経BP社)など。

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