高齢者介護施設で、利用者の高齢女性にわいせつ行為をおこなったとして、不同意性交などの疑いで起訴された50代の男性に対して、大阪地裁は12月10日、拘禁刑7年(求刑10年)を言い渡した。
介護施設という場所で起きた犯行である点に加え、起訴された事件数は10件にも及んだことにも驚かされる。
超高齢化社会の進展とともに、介護施設の重要度も高まる中で起きた犯行は、利用者やその家族のみならず、日々誠実に働く施設関係者の信頼も踏みにじる悪質な事件だったといえる。(裁判ライター・普通)
●自己の下腹部を押し当て…10件に及ぶ犯行内容
被告人はスーツ姿に眼鏡をかけて入廷し、背筋を伸ばして座った。裁判手続きの進行を終始静かに見守っていた。
その佇まいからは、約30年にわたり企業勤めをしてきた社会人としての経験がうかがえたが、起訴された内容は、その印象とは大きくかけ離れたものだった。
起訴状によると、被告人は勤務先の高齢者介護施設で、85歳と86歳の女性利用者2人が認知症により同意する意思をまっとうできない状態にあることに乗じ、約1カ月半もの間に計10件ものわいせつ行為をおこなったとされる。
具体的には、被害女性へのキス、乳首や下腹部を触る行為、下腹部への手指の挿入、自己の下腹部を相手の下腹部に押し当てるなどに及んだという。被告人はいずれの事実関係についても認めている。
●防犯カメラに残された「痛い」「イヤだ」の声
被告人は、事件の3カ月ほど前に、現場となった施設に就職していた。それ以前にも別の介護施設で約3年半働いていたという。
事件は、被害者の様子を不審に思った職員が、利用者の居室に設置された防犯カメラを確認したことで発覚した。施設内でおこなわれた事実確認の面談では、被告人が「性交が認知症の改善に効果がある」などと弁明していたことも明らかにされている。
証拠として提出された防犯カメラの音声反訳には、被告人が被害者に「チューしようか」などと声をかけている様子や、被害者が「痛い」「イヤだ」などとうったえる様子が記録されていた。
この事件を受けて、被害者の親族は「人の道を外れている」と述べ、強い処罰感情を示したという。

