「明日やる」を繰り返した結果
いざ退去の日。管理会社の担当者が部屋を見た瞬間、わずかに眉をひそめ、「えっと、掃除はこれで完了している状態ということでよろしかったでしょうか」と尋ねてきました。
床やもともと設置してあった棚に積もった埃はなんとか拭き取ったものの、他の掃除方法がわからず、キッチンの油汚れ、床には落としきれなかった黒ずみ、お風呂場や洗面台にはカビが生えたままの状態。ベランダもずっと掃除していなかったため、苔まで生えていたとか。
そんな状態で提示された退去費用は、R子が想像していた金額の倍以上でした。管理会社からは「カビや苔の発生により、通常の清掃では対応できず、専門業者による特殊清掃と修繕が必要な状態です」と説明を受けました。たった一言、「もう少し掃除してあればここまでかからないのですが......」と言われ、R子はその場で固まったそうです。
重い腰がついに上がる
R子は、しばらく放心状態に。しかし退去期日まで3日ほどの猶予があったため、大家さんに頼んでもう一度査定してもらう約束をし、すぐさまH子へ電話しました。
H子の助けを借りながらなんとか掃除を終え、「ねぇ、掃除って……めちゃくちゃ大変だね」とR子はポツリ。それに対しH子は「うん、大変だったね。でも、これで痛いほどわかったでしょ? こまめにしてればこんなことにはならないよ。次の部屋では、この経験を活かそうね」と、再びこの悪夢が繰り返されないよう祈りながらR子に伝えました。
その日を境に、R子の生活態度は一変しました。
新居では毎週末にリセット掃除を習慣化し、以前は「掃除のやり方がわからない」と言っていた人とは思えないほど、環境を整えることに前向きになったのです。
H子いわく「何を言っても響かなかったのに、あの出費が一番効いたみたい」とのことでした。
人はきっかけ次第で大きく変わることができるもの。苦い経験が、時にはスイッチになるのだと感じさせられるエピソードでした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:Miwa.S
事務員としてのキャリアを積みながら、ライター活動をスタート。持ち前の聞き上手を活かし、職場の同僚や友人などから、嫁姑・ママ友トラブルなどのリアルなエピソードを多数収集し、その声を中心にコラムを執筆。 新たなスキルを身につけ、読者に共感と気づきを届けたいという思いで、日々精力的に情報を発信している。栄養士の資格を活かして、食に関する記事を執筆することも。

