入浴がむずかしい高齢の方や要介護者にとって、清拭(せいしき)は清潔と快適さを保つための大切なケアです。温かいタオルで身体を優しく拭くことで、汚れを落とすだけでなく、血行促進やリラックス効果も期待できます。ただし、やり方を誤ると冷えや皮膚トラブルを招くこともあります。この記事では、清拭の基本知識から準備、正しい手順、注意点などを解説します。

監修医師:
小田村 悠希(医師)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
介護における清拭(せいしき)の基礎知識

ここではまず、「清拭とは何?」という基礎知識から学んでいきましょう。いつ必要なのか、混同しがちな入浴介助との違いについても解説していきます。
清拭とはどのような介護ケアですか?
清拭(せいしき)は、入浴が難しい方の身体を温かいタオルや蒸しタオルなどで拭いて、皮膚をきれいに保つ介護ケアです。濡れタオルを使って身体の汚れ(汗・皮脂・ほこりなど)を拭き取ることで、清潔を保つことを目的とします。拭く範囲は身体全体を対象とする全身清拭、あるいは手・足・お顔など部分的に拭く部分清拭があります。また清拭は、身体を濡れタオルで拭くことで温かさや水分を加えるという点で、単に乾いた布で拭くのとは意味合いが異なり、皮膚を傷めにくく、拭くときの刺激も考慮したケア方法です。
清拭が必要になるのはどのような場合か教えてください
清拭は、体調や身体の状況により入浴ができないときに行われます。例えば、病気やけが、手術後、寝たきりの状態、体力の低下などで浴室へ移動できない場合です。また、入浴の間隔が空くときや、汗をかいて皮脂がたまりやすい時期にも有効です。日中の軽い汚れやべたつきを取り除く部分清拭を行うことで、不快感を軽減し、皮膚の炎症や感染を防ぐことができます。さらに、清拭の過程では皮膚の状態を直接確認できるため、赤みやかぶれ、床ずれ(褥瘡)の初期症状などを早期に見つけるきっかけにもなります。
清拭は、清潔保持だけでなく健康観察としての役割も担う重要な介護ケアといえます。
清拭と入浴介助の違いを教えてください
どちらも清潔を保つためのケアですが、清拭はタオルで身体を拭くことで汚れを落とすのに対し、入浴介助は湯船やシャワーで全身を洗い流す方法です。清拭は居室やベッド上でも行うことができるため、身体への負担が少ないのが特徴です。一方、入浴介助は湯に浸かることで血行が促進され、よりしっかりと汚れを落とすことができますが、移動や体位の変化が必要になるため体力を使います。体調が安定しているときは入浴介助を優先し、体調が悪い日や入浴が難しいときには清拭で代替するなど、状況に応じて使い分けるのが理想です。
介護で清拭を行う前の準備とチェック項目

清拭を行う前には、いくつか事前に整えておくべき項目があります。覚えておきたい注意点もあるため、それぞれしっかりとおさえておきましょう。
清拭を始める前に準備すべきものを教えてください
まず、温かいお湯を入れた容器(バケツや洗面器)を複数用意します。石けん用と拭き取り用に分けておくと、拭くときの切り替えがスムーズです。次に、タオル類を確保します。身体用、顔用、陰部用、それぞれ替えを含めて数枚用意しておきます。乾いたタオルもすぐ使えるように近くに置きましょう。さらに、使い捨て手袋、清拭料(必要な場合)、着替えも準備しておきましょう。また、拭く部位以外を覆うバスタオルやシーツを用意しておくと、冷え対策になります。
清拭前に利用者の体調や状態を確認すべきですか?
はい、必ず確認しましょう。まず、顔色や呼吸の様子、痛みや不快感がないかを声かけで確かめます。特に、食後すぐや体力が落ちている時間帯は避けた方が安全です。また、食後は消化や血流の変動が大きくなるため、少なくとも1時間程度空けて実施するのが望ましいです。
室温や環境面で注意すべきポイントを教えてください
清拭中はお肌が露出するため、室内は暖かく保つことが重要です。目安として22~25度に保つとよいでしょう。また、窓や扉からのすきま風はできるかぎり遮断し、カーテンを閉めたり戸を閉じたりして冷気が入らないように配慮します。さらに、拭かない部位はバスタオルなどで覆っておくと、寒さを感じにくくなります。
清拭用のタオルやお湯の適切な温度はどのくらいですか?
お肌に触れるタオルは40〜42度程度が目安です。これより低すぎると冷たく感じやすく、逆に高すぎると火傷のリスクがあります。このため、用意するお湯は少し熱めの50〜55度程度にしておくと、タオルを浸して絞ったときにちょうどよい温度になります。

