至適血圧をご存知ですか?メディカルドック監修医が定義や維持することのメリットなどを解説します。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。
至適血圧(してきけつあつ)とは?
「至適血圧」という言葉を聞いたことはありますか?至適血圧とは何か、高血圧や低血圧、正常血圧との違いなど、詳しく解説します。
至適血圧の定義
高血圧治療ガイドライン2014[陽伊1] において、診察室で測定したときの収縮期血圧(最高血圧)が120mmHg未満かつ拡張期血圧(最低血圧)が80mmHg未満を至適血圧と定義し、130/85mmHg未満の血圧を正常血圧、140/90mmHg未満を正常高値血圧としていました。しかし、120/80mmHg未満での心血管病の発症率が最も低く、これより上昇することで心血管疾患の発症率が高まる事より、120/80mmHg以上の血圧を正常血圧とすることは適当ではないと考えられ、高血圧ガイドライン2019以降では120/80mmHg未満を正常血圧と定義しています。このため、至適血圧と正常血圧は同じと考えてよいでしょう。
血圧正常値と至適血圧の違い
前述の様に高血圧治療ガイドライン2019以降では、診察室で測定したときの収縮期血圧が120mmHg未満かつ拡張期血圧が80mmHg未満(以下、120/80mmHg未満と表記)を正常血圧と分類しており、これが血圧正常値となります。また家庭で測定した場合は、115/75mmHg未満が血圧正常値です。つまり、以前至適血圧と呼ばれていた血圧が、現在の血圧正常値なのです。
低血圧と至適血圧の違い
至適血圧と呼ばれていた診察室血圧120/80mmHg未満は、脳心血管病の発症リスクが低いとされる理想的な血圧の値です。
一方、低血圧は血圧が低めの状態を示します。一般的に成人の場合で収縮期血圧100mmHg未満が低血圧といわれますが、明確な診断基準はありません。
低血圧であっても身体が正常に機能していれば、とくに問題ないでしょう。ところが、立ちくらみやめまいなどの症状がある場合や、ほかの病気や薬の影響で低血圧を引き起こしている場合には、医師の診察を受けることがすすめられます。
至適血圧を保つことのメリットは?
至適血圧を保つことは、心血管疾患や脳卒中、腎疾患の予防につながります。血圧の高い状態が続くと、血管が厚く硬くなり、しなやかさを失ってしまいます。そうすると血管がもろくなり、心血管疾患や脳卒中を引き起こしやすくなるのです。
心血管疾患のリスク低下
至適血圧を保てば、心血管疾患の発症や死亡のリスクを下げられます。
血圧の高い状態が続くと血液を送り出す心臓に負担がかかり、心臓が肥大し、心不全を引き起こすこともあります。また心臓の周りにある冠動脈がしなやかさを失うと、冠動脈が一時的に閉塞する狭心症や完全に閉塞する心筋梗塞を引き起こしやすくなるのです。
脳卒中・腎疾患予防
至適血圧を保つことは、脳卒中や腎疾患の予防にもつながります。
実際、診察室血圧が120/80mmHgを超えて血圧が高くなると、脳卒中などの脳血管病や慢性腎臓病などの腎疾患に罹患しやすくなるとわかっています。血圧の高い状態が続くと、脳内の血管が詰まったり破れたりしやすくなるため、脳卒中の発症リスクが高まるのです。
また腎臓の内部には細い血管があります。血圧が高い状態が続くと腎臓内部の細い血管が詰まりやすくなるため、腎臓の機能が低下します。

