勝昭の涙ながらの懇願に、千佳子の感情はついに決壊する。軽蔑と愛情が激しくぶつかり合い、彼女は理不尽な状況に混乱する。離婚は考えられないものの、気持ちが整理できない千佳子は一度家を出ることに―――。
感情が大きくかき乱される
夫の告白を聞いてから、私の時間は止まってしまったようだ。律は目の前でかわいい寝顔を見せているのに、私はこの現実が、寝不足のせいで見ている悪夢ではないかと疑い続けている。
「私には、今この話はキツすぎる。律はまだ生後1か月で、私の体も全然回復してないのに…」
私はソファの端に座り込み、両手で顔を覆った。怒りとか、悲しみとか、そういう単純な感情だけではない。勝昭への変わらない愛情と、裏切られたことへの「許せない」という気持ちが、脳内で激しくぶつかり合っている。
簡単に嫌いになんてなれない
「本当にごめん。でも、相手からの連絡がひっきりなしで、もう隠し通すのが限界だったんだ…」
勝昭は泣いていた。私だって泣きたいのに…。
「私にとってあなたは、律の父親で、世界で一番大切な人だったよ…なのに…」
私の言葉は、本心だった。理屈じゃない。初めて告白された時の胸の高鳴りも、結婚指輪を交換した時の感動も、律が生まれた瞬間に2人で流した涙も、全て本物だと信じている。その記憶と、彼がした行為が、あまりにもかけ離れすぎていて、どう処理していいか分からない。
「私は律のことで頭がいっぱいなのに、あなたのこの話のせいで、心も体もぐちゃぐちゃだよ。もう何も信じられない…」

