布施駅北側、ブランドーリのアーケードを歩くと、不意に視界の隅に赤い文字が灯る。白地の暖簾に染め抜かれた「花月寿司」の文字。そして横には、年季の入った出前自転車。のれんの向こうから聞こえてくる「へいっ!いらっしゃい!」の声が、通りの空気を少しだけやわらかくする。
観光でもグルメサイトでもない、でも確かに“うまい寿司屋”が、ここにはある。

暮らしの風景に、寿司屋が溶けている
布施駅の北口を出て、ブランドーリ1番街のアーケードを抜ける。パチンコ屋の明かり、焼鳥の煙、道端の立ち話──そんな布施らしいざわめきの中に、ひときわ落ち着いた存在感で佇むのが「花月寿司」だ。

のれんを見つけたときから、すでに空気が変わる。出前箱を積んだ黒い自転車と、それを押す職人の姿。もうそれだけで、ここが“ちゃんと続いてきた場所”だとわかる。
観光客の足ではなく、日々の暮らしに根ざした、まちの寿司屋。
「へいっ!いらっしゃい!」に、空気ごと包まれる

のれんをくぐると、大将の声が店中に響く。
「へいっ!いらっしゃい~~~!」
という威勢のいい一声に、カウンターの空気が揺れる。それだけで、客も店も、ちょっと笑顔になる。

店内は奥に細長く、木のカウンターと小さなテーブル席。壁には木札で書かれた品書きが並び、水槽には今夜のネタたちが静かに泳いでいる。肩肘張らず、だけど手は抜かない。そんな空気が、椅子に座るだけで伝わってくる。
