蚊が媒介する感染症「ウエストナイル熱」をご存じですか? 発熱から神経症状までの特徴を医師が解説

蚊が媒介する感染症「ウエストナイル熱」をご存じですか? 発熱から神経症状までの特徴を医師が解説

ウエストナイル熱の前兆や初期症状について

ウエストナイルウイルスに感染しても、ほとんどの人(約80%)は何の症状も出ません。多くの人は感染したことにも気付かず、偶然、血液検査を受けたときに、過去に感染していたことが分かる場合があります。
(出典:国立感染症研究所「ウエストナイル熱/ウエストナイル脳炎とは」)

発熱と全身症状

ウエストナイル熱の主な症状として、発熱をはじめとする全身症状があらわれます。蚊に刺されてから2日から6日後(長い場合は14日後)に、突然の高熱が生じ、強い倦怠感や頭痛があらわれます。
(出典:厚生労働省「ウエストナイル熱の診断・治療ガイドライン」)

また、体全体の筋肉が痛くなることもあります。症状が進行すると、胸や背中、腕に発疹が出ることがありますが、かゆみはありません。首や脇の下のリンパ節が腫れることもあります。さらに、食欲がなくなったり、吐き気や下痢などの消化器症状が出たりすることもあります。

神経症状

ウエストナイル熱が重症化すると、髄膜炎や脳炎を引き起こすことがあり、それに伴ってさまざまな神経症状が現れます。

髄膜炎が生じた場合、激しい頭痛とともに首の後ろが硬くなり、光や音に対する過敏さが生じることがあります。

脳炎が生じた場合、意識が混濁したり、普段とは違う異常な行動が見られたりします。また、けいれんを起こすこともあります。さらに、手足の力が急激に低下したり、動きが悪くなったりといった麻痺症状が出現することも特徴です。

ウエストナイル熱の検査・診断

ウエストナイル熱では、抗体検査、PCR検査、血液検査・髄液検査、画像検査を、発症から経過した時間や患者の状態に応じて使い分けます。

抗体検査

血液や脊髄液の中にウイルスに対する抗体があるかを調べる検査です。症状が出てからおよそ8日以内に、ほとんどの患者で抗体が見つかります。
(出典:National Library of Medicine「West Nile Virus: Review of the Literature」)

ただし、感染初期では見つからないこともあるため、必要に応じて検査を繰り返します。なお、日本脳炎のウイルスにも反応することがあるため、患者の症状や海外への渡航歴や他の検査結果も考慮して、慎重な判断が必要です。

PCR検査

血液や脊髄液から直接ウイルスの遺伝子を検出する検査です。抗体検査は発症から数日経過しなければ原因ウイルスの検出が難しいですが、PCR検査は発症初期でも検出しやすいのがメリットです。両者は、いつ検査を行うかによって使い分けられます。

血液検査や髄液検査

血液検査では、白血球の数が正常か少し増える程度で、炎症反応を示すCRP値の上昇が確認できることがあります。一方、脊髄液の検査では、細胞の数やタンパク質の増加が見られます。神経症状のある患者では、髄液検査が診断の材料として重要となります。

画像検査

CTやMRIなどの画像検査では、通常は異常を示しません。ただし、症状の重い方では、脳のMRI検査で異常が見られることがあります。

配信元: Medical DOC

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