肺がんの原因
ここでは、肺がんのリスクを高めると考えられている要因について解説します。
喫煙
喫煙は、肺がんの発症に最も強く関係するリスク因子の一つです。統計的には、喫煙者は非喫煙者に比べて、男性で約4倍、女性で約3倍程度肺がんを発症しやすいと報告されています。特に、若年期から喫煙を始めた人ほどリスクが高まる傾向があります。
一方で、禁煙によって肺がんのリスクは少しずつ低下し、禁煙期間が長くなるほどその効果は大きくなります。また、喫煙による影響は本人だけでなく、周囲の人の健康にも及びます。受動喫煙を日常的に受けている人は、そうでない人に比べて肺がん発症リスクが約1.3倍に上昇するとされています。
喫煙歴がある人や、家庭・職場でタバコの煙にさらされる機会が多い人は、特に肺がん検診を定期的に受けることが望ましいでしょう。定期的な肺のチェックによって、肺がんなどの異常の早期発見が期待できます。
職業的要因
アスベスト(石綿)やラドン、ヒ素、クロム化合物、ニッケル化合物など、特定の有害物質に職業的に長期間さらされることで、肺がんのリスクが上昇します。これらは建設業や造船業、鉱山業など、粉じんの多い職場で特に問題となることがあります。
また、近年では環境要因としてPM2.5(直径2.5マイクロメートル以下の微粒子)などの大気汚染も肺がんとの関連が指摘されています。
過去にアスベストを扱った経験がある方で、咳・呼吸困難・胸の痛みといった症状がみられる場合は、放置せず労災指定病院や呼吸器専門医療機関への受診を検討してください。
間質性肺疾患
間質性肺疾患は、肺の間質、つまり肺を構成する小さな袋である肺胞の周りを支える組織に慢性的な炎症や線維化が起こる病気です。特発性間質性肺炎や特発性気質化肺炎など、さまざまな種類があります。
間質性肺疾患の患者では、肺がんを合併する割合が一般人口より高いと報告されており、約10〜20%と推定されています。
肺がんになりやすい人の特徴
肺がんを発症しやすい人には、いくつかの共通する要因があります。ここでは、代表的な特徴と注意点について解説します。
喫煙している、もしくは周囲に喫煙者がいる
タバコの煙に含まれる発がん物質が長期間肺に取り込まれることで、細胞の遺伝子に傷がつき、がん化の引き金になることがあります。
また、たとえ自分が吸っていなくても、家庭や職場での受動喫煙によってもリスクは高まります。特に子どもや女性など、喫煙習慣のない人にとっても悪影響があることがわかっています。
禁煙を試みてもなかなか続かない場合は、禁煙外来の利用が有効です。専門医によるカウンセリングや内服治療を組み合わせることで、成功率が高まります。咳や息切れ、血痰などの症状がある場合は、呼吸器内科を早めに受診しましょう。
過去にアスベストなどの有害物質にさらされていた
かつて建設現場や造船所などでは、アスベスト(石綿)が断熱材や防音材として広く使用されていました。現在は製造・使用ともに禁止されていますが、過去に吸い込んだアスベストが長期間肺に残ることで、肺がんや悪性中皮腫などの発症リスクが高まることが知られています。
症状としては、慢性的な咳や胸の痛み、呼吸困難などがみられる場合があります。アスベストを扱った経験がある方は、放置せず労災指定病院や呼吸器の専門医療機関に相談することをおすすめします。
肺結核など肺疾患の既往がある
肺結核や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎などの肺疾患は、肺がんの発生リスクを高めると考えられています。何らかの肺の病気で治療を受けている方は、しっかりと継続して通院を続けるようにしましょう。万が一肺がんを発症しても、定期的通院をしている場合には早期発見も可能です。

