多発性脳梗塞の検査法
多発性脳梗塞の原因を調べるには、血液検査、心電図検査、超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査などを行います。ここでは、多発性脳梗塞の原因を調べるためのそれぞれの検査について解説します。
血液検査
血液検査では、脳梗塞のリスクとなるような、高コレステロール血症や糖尿病の状態、血液の固まりやすさ、心臓への負担、血液の濃さなどを調べることができます。また、保険適用外の検査となりますが、遺伝子検査などを行うこともあります。
心電図検査
多発性脳梗塞の原因の一つに、心房細動という不整脈があります。不整脈の検査は心電図検査で行いますが、不整脈が出ている間に検査をしないと診断できないという問題点があります。心房細動には、常に不整脈が続いている「持続性心房細動」と、発作的に一時的な不整脈が出る「発作性心房細動」があります。発作性心房細動では、短い時間の心電図検査では異常が見られないことも多いため、長時間心電図を記録する検査が必要です。一般的には24時間心電図を装着するホルター心電図が行われますが、さらに長期間装着したり(イベント心電図)、心電図を記録する機械を皮膚の下に埋め込み、数年間記録を続けたりすること(植込型心電計)もあります。近年では、Apple Watchなどのスマートウォッチによる心電図記録も有効であると報告されています。
エコー検査
エコー検査は、超音波を使って行う、体への負担が少ない検査です。脳梗塞の原因を調べるときには、脳に血液を送っている首の血管(頸動脈や椎骨動脈)の状態や、心臓の動きや形などを調べます。
CT検査・MRI検査
CT検査は放射線を使って、MRIは磁力を使って、体の内部の状態を画像として映し出す検査です。脳梗塞を見つけるにはMRIが優れており、特に発症して間もない脳梗塞を評価するには非常に重要な検査です。MRI検査は、ペースメーカーなどの精密機器が体内に埋め込まれている場合や、金属が体内にある場合(入れ墨、一部のインプラントなど)は撮影できないことがあるので注意が必要です。CT検査は放射線への被ばくはありますが、短時間で体の内部の状態を映し出すことができます。また、造影剤を使うことで、動脈硬化の程度や血液の流れを評価することもできるため、多発性脳梗塞の原因を調べるのに役立ちます。
多発性脳梗塞の主な治療法
多発性脳梗塞の治療は、発症から数時間以内の「超急性期」の治療、発症して間もない「急性期」の治療、そして発症から時間が経った「慢性期」の治療に分けられます。超急性期の治療では、血栓を溶かす薬などを使って詰まった血管をできるだけ早く開通させ、血液が足りなくなっている脳を助けることを目指します。急性期や慢性期では、脳梗塞の再発を防ぐために、血液を固まりにくくする薬(抗血栓療法)などを行います。
血栓溶解療法・血栓回収療法
脳梗塞の多くは、血の塊(血栓)が血管を詰まらせることが原因で起こります。血栓溶解療法は、t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)という薬を使って、体内の血栓を溶かし、詰まった血管を再び開通させることを目指す治療です。血栓回収療法は、ある程度太い血管が詰まっている場合に、カテーテル(血管の中を通す細い管)を使って、動脈から直接血栓を回収し、詰まった血管を再び開通させることを目指す治療です。
これらの治療は、後遺症を減らすために非常に効果的ですが、出血などのリスクも伴うため、ある程度以上の脳梗塞の症状があり、発症から数時間以内に治療を開始できる場合に行われることがあります。
抗血栓療法
抗血栓療法は、血液を固まりにくくする治療で、脳梗塞の治療の中心的な役割を担います。脳梗塞は発症した直後に再発しやすい傾向があるため、脳梗梗塞が起きた直後はより強力な抗血栓療法を行い、慢性期には脳梗塞の原因に応じて適切な抗血栓療法を行います。抗血栓療法で使う薬は、大きく抗血小板薬と抗凝固薬に分けられます。抗血小板薬は、血液の流れが比較的速い場所でできる血栓の予防に有効で、抗凝固薬は、血液の流れが滞るような状況でできる血栓の予防に有効と、薬の働きが大きく異なります。そのため、脳梗塞の原因をはっきりさせ、原因に応じて使い分ける必要があります。
生活習慣病の治療
慢性期の脳梗塞の再発予防には、高血圧や糖尿病、高コレステロール血症などの生活習慣病の治療も非常に重要です。特に脳ドックなどで偶然見つかった多発性脳梗塞は、高血圧と関係が深いタイプの脳梗塞であることが多いため、食事療法や運動療法、禁煙、適切な薬物治療といった生活習慣病の治療が重要になります。

