
子どものころから漫画に親しみ、ユーモアを交えた作品を描いてきた宮野シンイチ(@Chameleon_0219)さん。X(旧Twitter)で発表している「夜逃げ屋日記」は、DV被害や生活破綻など、実際に夜逃げを請け負った経験をもとに描かれた実録漫画で、今回紹介するエピソードも多くの反響を集めている。「夜逃げ」という極限状態に置かれた人間のリアルを、淡々としすぎない筆致で描き出すのが本作の特徴だ。
■退寮期限が迫る母子、追い込まれた末の依頼



今回の依頼者は、大崎ノブコとその息子・ソウスケ。ノブコは約10年前に離婚して以降、ひとりで子どもを育ててきたが、病弱な息子の看病で仕事を休みがちになり、ついには職を失ってしまう。現在住んでいるのは社員寮で、年始の営業日までに退去しなければならない状況だった。引っ越し業者も動かない時期に追い詰められ、藁にもすがる思いで夜逃げ屋に連絡をしてきたという。
■大量のゴミ袋と、噛み合わない受け答え
現地に到着した社長と宮野、デンゾウの3人を迎えたのは、部屋いっぱいに積み上げられた大量のゴミ袋だった。社長が状況を確認すると、ノブコはそれらを新居に持っていけるかと当然のように尋ねる。処分する前提で話が進まないやり取りに、現場の空気は徐々に重くなっていく。生活が破綻していることは明らかで、冷静な判断ができる状態ではないことが伝わってくる場面だ。
■前払いできない依頼料、そして突然の土下座
家の様子を見た社長は、単刀直入に依頼料が支払えるかを確認する。事前の電話では用意していると聞いていたものの、ノブコはその場で「今日は払えない」と打ち明けたのだ。「来月まで待ってほしい」という申し出に対し、社長は原則前払いであることを理由に、今回は引き受けられないと判断した。すると突然その場で土下座し、涙を浮かべながら助けを求めるノブコ。わずかな現金を探そうと、ゴミ箱まで漁り始める姿に、場の空気はさらに張り詰めていった。
■夜逃げ現場で見える、追い詰められた人の現実
宮野シンイチさんによれば、「当日になって依頼料を支払えないと告げられたのは、このケースが初めてだった」という。それだけに、強く印象に残っている出来事なのだそうだ。また、部屋が散らかっている依頼者は決して珍しくなく、精神的に追い詰められるほど片付けまで手が回らなくなる人は多いのだとか。夜逃げの現場には、金銭的な問題だけでなく、人が限界まで追い込まれた末の姿がそのまま残されている。
果たしてノブコは、もう一人のスタッフが到着するまでに依頼料を用意できるのか——。前代未聞の事態に直面した夜逃げ屋の判断も含め、物語はこの先さらに緊迫していく。
取材協力:宮野シンイチ(@Chameleon_0219)
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