美也子は達治の勘違い発言を強く否定するが、彼は一転して「お世話になったけじめ」として20万円を振り込むと強引に申し出る。過去に達治の尻拭いをしていた美也子にとって、今さらお金を渡そうとする行為は達治の自己満足に思えて―――。
元カレのデリカシーのなさにイライラ
達治からの、あまりにも理不尽で失礼な勘違い発言に、私は冷静さを装いつつ、ピシャリと否定のメッセージを送りました。
「違う。おなかの子は良一との子だよ。変なこと言わないで」
送った後も、心臓はバクバクしていました。彼には、別れる前の私の、彼に対する嫌悪感が伝わっていなかったのか、それとも、都合のいい記憶に塗り替えているのでしょうか。どちらにしても、彼の言動が私を深く傷つけたことは確かです。
数分後、達治から再びメッセージが届きました。
「ごめん。店長と結婚したのは知ってたけど、つい聞いてみたくなっちゃっただけ」
謝罪はあったものの、その「つい」の一言で、彼の私への未練や、当時の私の気持ちに対する理解の浅さが透けて見えます。昔から彼は、こういうデリカシーのないところがありました。私の気持ちよりも、自分の感情を優先する人だったんです。
20万を振り込むと言い出した
やっと謎の連絡から解放されたと思ったのですが、少し時間を置いて、またメッセージがきました。しかも、内容はそれまでよりもさらに不可解です。
「美也子、近々20万円振り込むからさ。何かに使ってよ」
は? 今度は何? わけがわかりませんでした。
「え!どういうこと? お金なんていらないからやめて」
すぐに返信しました。彼の目的が全く見えなかったのです。
「いや、付き合ってるころ色々助けてもらったのに返せてなかったから、この機会にと思って」
この機会に?
確かに、付き合っていたころは生活費が払えない彼に代わって公共料金を払ってあげたり、借金を肩代わりして返したりしたこともあります。でも、今更20万円なんて大金を受け取っても、清算してもらえてうれしいどころか、夫に後ろめたくて迷惑でしかありません…。
「気持ちはわかったけど、今は正直お金をもらっても困る。本当にいらないよ!」
私が強く辞退すると、今度は少し語気を強めた返信が来た。
「店長には黙っていればいいだろ?俺の気持ちなんだから受け取ってくれよ!」

