「腸重積を放置するリスク」は何かご存じですか?対処法も医師が解説!

「腸重積を放置するリスク」は何かご存じですか?対処法も医師が解説!

お腹の病気と呼ばれるものにはさまざまな種類があります。しかし、「腸重積(ちょうじゅうせき)」はあまり聞きなれない方も多いかもしれません。

腸重積は単なる腹痛とは違い、腸管の血流が低下するために、腸管が壊死をして、腸管破裂や腹膜炎などを起こすなどの重症化のリスクを伴います。その一方で、あまり広く知られていないのも事実です。

乳幼児に発症することが多い病気ですが、大人の場合でも、大腸がんなどを理由に腸閉塞となる場合があります。

この記事では、腸重積とはどのような病気なのか、リスクと対処法などを詳しく解説します。

※この記事はメディカルドックにて『「腸重積(ちょうじゅうせき)」とは?症状や原因についても解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

武井 智昭

監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

腸重積を放置するリスクと対処法

女の子腹痛

腸重積を放置するとどのようなリスクがありますか?

腸重積では、重なってしまった腸管部分が閉塞状態を起こします。すると腸管に血液が流れにくくなってしまい、長時間放置すると壊死してしまう可能性が高くなります。

腸管が壊死や腐ったような状態になると、腹膜炎や細菌感染を起こすなど重症化するリスクが高いです。命にも関わるため、できるだけ早く受診して治療を受けることが大切です。

また、大人が腸重積を起こす場合は、小腸ポリープ・悪性リンパ腫・メッケル憩室・重複腸管、大腸がんなどの疾患による慢性的な進行が考えられます。

腸重積の治療と併せて、原因となっている病気も早期に治療することが大切です。

早期発見・治療が大切なのですね。

重症化してしまうと命にも関わるリスクがあるため、なるべく早期に発見・治療をする必要があります。

発症から12時間を超えてしまうと、非観血的整復法での対処ができなくなる点にも注意が必要です。

激しい腹痛・嘔吐・血便などの症状がみられた場合、悪化させないためにも放置せずにまずは医療機関を受診するようにしてください。

0~2歳だと言葉がうまく話せないので判断が難しそうです…。

0〜2歳の乳幼児は特に発症率が高いです。まだ言葉で症状を伝えることが難しい場合も多いため、大人が注意深く様子をみてあげる必要があります。

それまで機嫌が良かったはずの乳幼児が突然激しく泣き出し、10〜15分おきに繰り返されるなど間欠的である場合には、腸重積が原因となっている可能性が高いです。

激しく泣く・原因不明の不機嫌が続く・顔面蒼白になっている・ぐったりしているなどの様子がみられたら、腸重積を起こしている場合があります。しかし、様子だけでは腸重積かどうかの判断に悩んでしまうケースも少なくありません。

放置するリスクの高さを考えても、まずは医療機関を受診しておくと安心です。また、いちごゼリーのような粘液性の血便も腸重積の特徴です。もしも粘液性の血便が確認されたら速やかに受診してください。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

腸重積は原因が不明なケースも多い一方で、早期の発見・治療がとても重要です。重症化すると死亡するケースもある恐ろしい病気ですが、乳幼児の発症の割合が高く、不安を抱える保護者の方も少なくありません。

機嫌の悪さや泣き方など、「いつもとなんだか違う」という保護者の方の感覚もとても重要です。腸重積が疑われると感じたら、医療機関を受診しましょう。

また、大人が発症する場合には重篤な疾患が隠れているケースが多いです。異変を感じたら放置せず、なるべく早期に受診・治療を行ってください。

編集部まとめ

お母さんと赤ちゃん
腸重積とはどのような病気なのか、原因・治療法・リスクなどを解説しました。

腹痛は日常的に経験するものでもあり、つい我慢したり見過ごしたりしやすい症状でもあります。

嘔吐・血便がなくても腸重積が起こっている可能性もあるため、頭の片隅に置いておくことで対処できる確率が上がります。

大人の体調の変化ももちろんのことですが、特に発症率の高い乳幼児は言葉でうまく表現できないため、大人がしっかりと見守ってあげましょう。

重症化を防ぐためにも早期発見・治療できるよう、異変を感じたら放置せずに受診することが大切です。

参考文献

腸重積症|一般社団法人日本小児外科学会

腸重積症|KOMPAS 慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト

腸重積|日本赤十字社 姫路赤十字病院

配信元: Medical DOC

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