TBS退社から紆余曲折を経て20年生活した東京を後にして活動拠点を故郷北海道に戻したアンヌさん。アラフォーにして再スタートを切った「出戻り先」でのシングルライフの様子や心境をつづる連載です。
第63回となる今回は、とある名店で“女性のたくましさ”を感じたエピソードをつづります(以下、アンヌさんの寄稿です)。
冬の札幌、とある赤提灯の名店で
冬の札幌の夜に外で飲む、というのは、それだけでちょっとした覚悟がいるもの。地下鉄を出た瞬間、氷点下の風が全身を包み込み、道はツルツル。気を抜くと一瞬で足を取られるのでよちよちと足を運ばねばなりませんが、そんな先に現れる赤提灯の灯りと、もつ焼き屋さんの暖簾。ああ、冬の札幌でこれ以上に最高な場所ってないのではないでしょうか。
その日も私は、仕事帰りに友人と軽く飲もうと、お気に入りの、ある名店へ。店内はぎゅうぎゅうで、コートを脱ぐ場所を探すのにも一苦労。暖房と煙と人いきれで、メガネが一瞬曇る、あの感じがもうたまらない。
黒ホッピーともつ煮込みを楽しんでいた私の近くの席に、若い男女のカップルが座っていました。20代後半くらいでしょうか。聞くともなしにその会話は聞こえてきます。
若いカップルの1人の様子がだんだん…
どうやら二人は敬語で話している様子。マッチングアプリを通じての出会いなのか、それとも会社の同僚なのか、関係性はわかりませんでしたが、お互いどことなく憎からず思っている様子が伝わってくる。いずれにしてもこのお店はきちんと予約を入れないと入れない名店。ここを選ぶなんてセンスいいぞ! と心の中でエールを送っていたのもつかの間、最初は楽しそうにふたりで笑っていたのですが、時間が経つにつれて、その男の子の体調がお酒でだんだん悪化していく様子が如実に伝わってきたのです。
トイレに立ったかと思えば全然出てこない、出てきたと思えばカウンターで突っ伏すようなかたちになってしまい、ついには椅子から動けなくなってしまったのです。
一緒にいた女の子は、最初は笑っていました。「もう飲みすぎだって」と言いながら、背中をさすっていたものの、つっぷして微動だにしなくなった男の子の真横でかたまってしまい、言葉こそ発しないものの明らかに困っている様子を醸し出しはじめていました。そりゃそうです。
外は真冬の札幌。終電の時間も気になる一方、タクシーに乗せたくても誰がどうやってこの男の子の体を運べばよいのでしょうか。しかも、この雪道。彼が目覚めるそぶりはまったく見せません。どうしたもんでしょうか。ここまで人が飲食店でつぶれている様子も私は結構久しぶりに見た気がしますが、これはほとほと困ってしまうパターン。

