●検察官主導型刑事司法は「自らルールを決められるボクシング」
──その構造には、どのような問題がありますか。
当然のことながら、「検察官に不利益な法律」は作られにくくなります。
ボクシングに例えてみましょう。起訴後の有罪率が99%を超える日本の刑事裁判では、検察官はリング上の「絶対王者」です。(検察官が有罪として)勝てそうな相手(被告人)を自分で選び(起訴して)、勝ち続ける。
その絶対王者が使うグローブ(証拠)やリングの大きさ、さらには対戦相手のセコンド(弁護人)にどれだけの権限を与えるかまで、「絶対王者たる検察官が選んだ人たち」がルールを作ります。
ボクシングなら間違いなく「フェアじゃない」と批判されますが、日本の刑事司法では、それが当たり前のようにまかり通っています。
●改正されてこなかった背景「国会議員、マスコミ、研究者の怠慢」
──それが、再審法改正が進まなかった理由にもつながるのでしょうか。
そう思います。多くの冤罪事件が明らかになりながら法改正が実現しなかったのは、今回の法制審で意見が出ているように「あくまで誤判や冤罪はほんの一部に過ぎず、全体として刑事司法は問題ない」という前提認識が変わらなかったからだと思います。
そして、その前提が維持されてきた背景には、ハンセン病強制隔離問題と同じように、国会議員、マスコミ、研究者側の怠慢もあったと思います。


